特攻インタビュー(第5回)・その26
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編集者
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陸軍水上特攻 皆本義博氏
◆若い人たちへ贈る言葉
--------はい。読ませて戴きたいと思います。その他に若い人に何か伝えたいことがあれば。
皆本‥特攻隊経験者として感じましたのは、まず、執行者の立場ですね。そして、目的と可能性を冷静に検討し、自己の勢いを自制すべきであると。何か、勢いに任せてやるという事は、上に立つ人は絶対やっちゃいかんと。もう、これをしみじみと感じました。
それから、チャーチル首相の就任の時の下院での第一声、「私が捧げることができるのは血と苦労と涙と汗だけである」。ブッシュ大統領は就任の演説で「私は、あなた達が観衆や従僕でなく、市民であることを求めたい」。エール大学のスタンパーグ博士は「秀才知より成功知へ。無力な秀才知から活力ある成功知能へ」。そして、「民主主義とは守ってもらうものでなく、守るものだ」と言っています。これは、さっきちょっと触れました松尾文夫さんの『銃を持つ民主主義』にある言葉で非常に感銘を受けました。私は、歴史なき理論は空虚で、理論なき歴史感は盲目であると考えています。部隊の先頭に立っていく当事者はさっき申し上げました通りと考えます。
60年ぶりにアメリカ歩兵第77師団のプライベート・ファースト・クラス(陸軍一等兵) の方に会って別れる時に、「必要あれば、私は年をとっていても、自転車に乗ってでも竹槍を持って行くんだ」ということを言いましたら、その場にいたテレビ局と新聞社がそういう風に纏めて報道してくれました。やはりですね、人にやらせん、自分がやらにゃいかんな、という感じがしています。
おかげさまで私は30年近く、環境関係の会社で大事にして頂きましたが、創業者の会長が「皆本さん、新入社員に何か教えてくれますか」と言うから、「諸君、入社おめでとう。君たちに二言、言いたいのは、会社に来て挨拶するのは社長は後でいい。トイレの掃除をしているおばさんに頭を下げて、ありがとうございますと言え。それができるようになったら会社の役に立つ」と簡単にやりました。というのは、トイレの掃除をしている人なんかは、ご主人がいないとか、難儀しながら食っていくために一所懸命頑張っている。そういう人ほど大事にすることが大切だと。で、私もバスなんかで乗りますとね、降りるときに「どうもご苦労さんです」と言ってね。やっぱり、それが大切だという感じがしております。
それからもう一つ。代表的民主主義国家の日本には、やはり、兵役制度……徴兵制じゃなくて兵役制度がないと……やはり皆が均等に国防の意識、その負担を感じないという気がしています。今度、何でしょ。インド洋の給油を引き揚げるなんてことを言っている。そんなもんじゃないな、っていうことです。
--------今日は貴重なお話をありがとうございました。
(……了……)