@





       
ENGLISH
In preparation
運営団体
メロウ伝承館プロジェクトとは?
記録のメニュー
検索
その他のメニュー
ログイン

ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失

「村松の庭訓を胸に 平和の礎となった少年通信兵」・21

投稿ツリー


このトピックの投稿一覧へ

編集者

通常 「村松の庭訓を胸に 平和の礎となった少年通信兵」・21

msg#
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/3/18 8:29
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 宿願を達成して

 教官  本 川 栄 吉

 宿願達成の朝、記念すべき昭和四十五年十月十一日、夜来の暴風雨は一過し洗い浄められた村松の大地に、木々に、草々に朝の光がさん然と輝いた。前日までの悪天候が拭ったような快晴に一変したのである。誰しもが奇跡を思い厳粛に英霊のご加護を思わずにはおられなかった(ちなみに翌十二日は再び雨天に戻った)。
 全国少通連合会員その他の多くの人々、ならびにご遺族方の長年の念願協力が実を結び、今ここ村松少通校々舎を見下ろす丘の上に戦没陸軍少年通信兵の慰霊碑が姿を現した。
 真新しい碑前に高々と奉読されゆく懐かしい一九九柱のご氏名が萬感を伴って耳朶《じだ》を打つ。天地の間この声のほかに声なく粛々として神気あたりを払う。ご遺族の、そして会員の体が打震え感動の涙が頬を伝う。この一瞬のために歩んできた長い道坂のこと、この日を待たずに逝かれた方々のことがふと頭をかすめる。
 献花の列が長々と続く。わが子、わが兄、わが弟のおもかげを偲び菊花を捧げて深々と拝まれるご遺族、校友の名を呼び微哀を花に託す会員。碑前を埋め尽した菊花が英霊の勲《いさお》を讃えて秋空に馨る。
 自衛隊音楽隊によって力強く少年通信兵の歌が奏せられ、四〇〇余名の大合唱が練兵場の澄み切った空気をゆり動かし愛宕の山にこだまする。
 東亜に誇る日の本の
 皇国の楯と選ばれて‥‥‥…

 ああこの歌が絶えて二〇有余年、思えば長い忍従の年月であった。今こそ再び思い出の山河に少年通信兵の歌がとどろく。
 在天の英霊よ聞こしめせ、兄等と共に歌ったこの歌を 白山よ、菅名岳よ、早出川よ、歓喜して我等の歌に和せ。
 草深き校舎に生色甦《よみが》えり、校門の老松懐旧の念いに哭《な》く。秋晴れの村松平野に繰りひろげられた一幅の絵巻物のような除幕式、それは私の戦後における最も幸福な、また充実した一ときであった。

 (むらまつ第六号収載)


  条件検索へ