鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 13
投稿ツリー
-
鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ (編集者, 2012/10/26 7:59)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 2 (編集者, 2012/10/27 7:17)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 3 (編集者, 2012/10/28 8:32)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 4 (編集者, 2012/10/29 7:35)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 5 (編集者, 2012/10/30 7:54)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 6 (編集者, 2012/10/31 8:42)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 7 (編集者, 2012/11/1 7:43)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 8 (編集者, 2012/11/2 8:09)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 9 (編集者, 2012/11/3 8:28)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 10 (編集者, 2012/11/4 9:11)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 11 (編集者, 2012/11/5 6:48)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 12 (編集者, 2012/11/6 7:45)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 13 (編集者, 2012/11/7 8:04)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 14 (編集者, 2012/11/8 7:50)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 15 (編集者, 2012/11/9 7:39)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 16 (編集者, 2012/11/10 7:47)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 17 (編集者, 2012/11/11 9:53)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 18 (編集者, 2012/11/18 8:27)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 19 (編集者, 2012/11/19 6:25)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 20 (編集者, 2012/11/20 6:53)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 21 (編集者, 2012/11/21 7:58)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 22 (編集者, 2012/11/22 6:16)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 23 (編集者, 2012/11/23 6:14)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 24 (編集者, 2012/11/24 5:44)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 25 (編集者, 2012/11/25 6:16)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 26 (編集者, 2012/11/26 7:33)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 27 (編集者, 2012/11/27 5:47)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 28 (編集者, 2012/11/29 7:33)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 29 (編集者, 2012/11/30 9:29)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 30 (編集者, 2012/12/1 8:56)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 31 (編集者, 2012/12/2 8:53)
- 鎮魂・西海に、比島に、そしてシベリアへ 32 (編集者, 2012/12/3 8:43)
編集者
居住地: メロウ倶楽部
投稿数: 4298
Ⅲ 山岳地帯への逃避とその生活 その3
彼方此方に死体が転がっていました。フィリピンは熱帯地帯ですから、人間が死ぬと2~3日もすると、死体が2倍程に膨張します。その後、体の一部が破れはじめ、ドロドロの粘液が流れ出して腐敗が進み、次第に形が崩れます。
それに蠅が真っ黒くなる程たかり、蛆が湧いて勢いよく動くのが見えます。その頃が一番臭く、言葉では言い表せない厭な臭いでした。
そうした死体の数が多かったので、山の何処にいても死臭が漂ってきます。
死体は、青天でも毎日1~2度は降る土砂降りのスコールに洗われ、そして灼熱の太陽に焼かれ、忽ち白骨化します。そして、バラバラに散乱します。
戦死者は別として、餓死や病死した死体は、何故か言いあわせたように、仰向きに倒れ、眼は必ず見開いており、しかもヤブニラミ(斜視)でした。どちらの方角から見ても、こちらを睨んでいるようで、小心な私はとても恐ろしく、傍を通る時は、目をそむけて通り過ぎたものです。これが日本を出る時、歓呼の声に送られ勇躍出征した帝国軍人の、哀れな、なれの果てです。
マラリア、夜盲症(鳥日)、熱帯潰瘍、アメーバー赤痢、一―私はその全部に罹って苦しみました。勿論、薬も包帯もなく、軍医、衛生兵もいません。友軍同士の食糧の奪い合い、殺し合いもありました。飢えの苦しさから、死んだ兵士の肉を喰っている者を見たことがあります。太股や頬をえぐられている新しい死体も見ました。
「調味料があったら交換してくれ」と言って乾燥肉を持ってきた兵がいましたが、多分、それは人肉だっただろう、と思います。その頃に牛や豚等の食用肉が.ある筈はありません。生きるためには徹底したエゴイズムと、動物的欲望によって理性を失い、倫理は破壊され、餓えた地獄の鬼になるのです。