特攻インタビュー(第2回) その22
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陸軍航空特攻 中村 真 氏
◆編隊は次々に被弾炎上し海中へ落下(1)
--------12月14日の出撃も、敵機がワーツと来て、当然射手も撃つのでしょうけれども、そんなときでも編隊長に付いて行くというのが、操縦士の基本だったのでしょうか?
中村‥そうです。加速度をつけながら降下する9機編隊が、だいたい時速350kmくらいの速度で、これ以上の速度だとフラッターを起こすけど、なにくそっ!とばかりに編隊長機に合わせて食い付いて行くわけです。そこへ敵が後上方から、攻撃をかけて来ます。編隊長機の後上砲射手・戸田軍曹が一番よく敵が見えるので、彼が歯を食いしばって20mm砲をガンガン撃ちまくってるのが見えました。後で考えると、本当は何で敵の船がいないのに、特攻隊の編隊を出動させたんだろうと。考えてみれば軍司令官の命令でしょ。丸山大尉は、なに馬鹿なことやったんだろうと、こう思ったんですよ。だから、丸山大尉はどうすることもできない。現場に行ってみたら敵の船がいない…、自分は48名の部下の責任者を命じられている。さあ、どうしようと、丸山大尉は悩んだんじゃないかなあと思いますね。私がもし特攻隊長を命ぜられた丸山大尉の立場だったら、どういう判断をしたんだろうと思って…、なんせ敵艦が全然いないんだから…。上空にはアメリカの戦陣機サンダーボルト (P-47) が18機くらいで待っていたって、秦郁彦さんの調査では書いてありましたけどね。
降下していったはいいんだが、高度計が100mになったとき、今度は突然隊長機が突っ込みながらの急角度の右旋回を始めました。時速350kmくらいで行ったやつが、ここでレバーを絞らないと(手振りで)こっちに出ちゃうわけですよ、私らなんか。あるいはこっちに出ちゃう。内側の私は仰向くような形で旋回する。レバーを絞るので速度が急激に落ちます。海と島影が目に入る…。体当たりする敵の船はどこだ?と一瞬思ったが、失速寸前の今はそれどころじゃない。これは大変な旋回をやってるねって瞬間思って、こいつはこう出ないと俺のほうが落っこっちゃうから、長機の下を向こう側へ潜り込んで抜け出ようと思ったときに、敵の弾が私の機に当たったんですね。旋回のときは機体が失速するから狙われやすい、敵はそこを突いて撃ってきたんでしょう。
幸い右旋回中だったから、私はすぐに右エンジンの回転を上げ、プロペラスイッチを下げて片発飛行に移りながら右上方を見ると、さらに旋回半径が大きい3番機は、グワングワンとエンジンをふかして長機を追っかけないといけないのですが、その3番機の久美田軍曹機も敵にやられて火がついて、私の目の前で主翼から真っ赤な炎と黒煙を噴出させながら、海中に突っ込んでゆきました。操縦席の後ろで、日の丸の鉢巻をしめた機上機関の富田軍曹が別れの手を振ったように見えました。あれは本当に気の毒でしたね。私の飛行機も、そのときボコツという衝撃と一緒に、左のエンジンに敵の弾を喰らって、ガガツと火が出て黒煙を噴出し空転しだした。ああ、こりゃダメということで編隊を離脱しました。2番機は離脱、3番機は火を噴いて落ちて、大音響を上げて爆発を起こす。編隊長機はそのままダーツと、右へ旋回を続けていくと。それが第1編隊ですから3機、それから第2編隊、第3編隊とあるわけです。他の5機はどうしたか分からないけれども、私が編隊離脱するときに2機火を噴いて落ちてゆきましたから…。3番機が落ち、2機が先に落ち、私の機が片方のエンジンをやられて落ちると、あのときは第1撃で合計4機が落ちたと思いますよ。海上のあちこちで我が方の機であろう爆発が相次いで、ガソリン特有の真っ黒な煙と真っ赤な炎が噴き上がっていました。