特攻インタビュー(第2回) その25
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編集者
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陸軍航空特攻 中村 真 氏
◆空中戦で撃墜され海上に不時着(2)
--------機体の被害状況はどうだったのでしょうか?
中村‥操縦席のガラスは厚さ5cmはあった防弾ガラスを含めて全て吹っ飛んでいました。たぶん飛行機は後上砲の部分から真っ二つに折れて、主翼だけで浮かんでいたんだと思いますね。
主翼の3番タンクが空で浮き袋になっていましたから。最初は浅瀬に着水したと思ったんですが、あんな海の真ん中に浅瀬なんかあるはずがないからねぇ。
泳ぎには自信がないし、さてこれからどうしたものかと考えていると、「中村、中村!」と私の名前を呼ぶ声がする。見回すと私の立っている主翼の後ろの海の中から、藍原少尉が周囲の海を血潮で真っ赤に染めて、「オーッ」とこう(手振りをされて)手を振っている。私は「あっ!藍原少尉、やられましたね!」って言いながら、飛行機の上に引っ張り上げてやろうと思って手を差し延べたとたん、ウワウワッと(身振りをされて)今まで浮かんでいた機体がまるで吸い込まれるように海中へと沈んでいったわけです。
考えてみればね、500kgの爆弾を吊ったまんまだから…あれは、本当は途中で捨てたかったんですよ。だけど、敵がいないのに海に捨てるのももったいないし、もしそれが島なんかに当たって爆発した場合に、住民が怪我したり死んだりしたら、また気の毒だし。また海面スレスレに逃げていましたから、高度100mくらいのところであの爆弾を離したら、どういう具合に機体へ跳ね返ってくるかも分からない。だから結局、爆弾を捨てるチャンスを失って、そのまんま海の中に飛び込んだわけだから…。発見されたこの飛行機にも(手記をご覧になって)、500kgの爆弾が積んであるからね、って言ったら(笑)、教えてくれた方が「現地に直ぐに連絡します」と言ってました。その後のことは、聞いてませんけど…。
尾部には藍原少尉のほかにも小林曹長という射手が乗っていましたが、もう最初からどうなったか消息が全然分からない。この飛行機を海中で発見したウィンズ・インターナショナルの社長に、遺体みたいなものはなかったかって聞いたら、見つかんなかったって言うから…。まあ、60年も経っていればねぇ、人間の骨もなくなっちゃうのかもしれないですね。
--------まあ、機外へ流されちゃったかもしれませんしね。どこか飛行機とは別のところへ…。
中村‥そうですねぇ…。なんせ爆発してるんだから、遺体はフィリピンの海の底にあるのでしょうが、どうなっているか分かんないもんね。私の機は爆発しないで平らに沈んだから、多分これは私の機だということなんだけど、確証はないんです。確証はないけれども、ここに今持って来ているビデオ映像には、もう細かくあっちからもこっちからも、イソギンチャクがくつついたような左発動機やら20mm機関砲やら何やらが映っていまして、私が引っ張っていた操縦桿も映ってるので、あの状況から当時爆発しないで、そのまま平らに沈んでる飛行機は、私のぐらいしかないのではと思っているわけです。