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捕虜と通訳 (小林 一雄)第二部・26

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通常 捕虜と通訳 (小林 一雄)第二部・26

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2008/10/10 8:34
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 捕虜収容所長の獄中日誌 (その3)・6

 十六日の日誌に私のことを記しているのには驚いた。「(中略)二月三日の朝日新聞大阪版の右上角に写真入で小林一雄通訳の記事が出ている。多奈川収容所の通訳として捕虜の為に自費で書物を買ふなど盡したと言ふ。堺市中向陽町の国際物産会社金岡出張所長の彼に手紙で連絡しやう。上京して僕のために米検事団の招請に応じ証言したと出てゐる」 恩師で上司だった中尉は、私の人生の師であり、無実の容疑をぜひとも晴らしたい一心だった。

 十七日には、新円発行、食糧供出に強権発動の等急〝勅命″の出たこと。妻子に計四百円しか預金支出ができず〝生活できるだろうか″などと不安をのぞかせる文字も。
 捕虜収容所多奈川分所の関係者の軍事裁判が行われることは、英文ニッポン・タイムズを読んで知ったという中尉。二十日の日誌に 「今日のThe Nippon Times は多奈川分所五名の同裁判の件を報じている」 と、その英文を転記している。逃亡捕虜タイラー一等兵 (アメリカ陸軍) を虐待死亡させたというもの。峰本善成軍曹や民間人ら五人がその罪状で横浜軍事法廷で合同裁判を受けるというもの。

 翌二十一日にはこれに関連して次のように記している。「分所長の僕を放っておくとは何ういふことか。僕を起訴しない積りかとも思はれる。証人に立つだけならよいのだが。それにしても此の五名の殴打でタイラーが死亡したとしているのは、野須軍医や村田大佐がすっかり事実を曲げて罪をなすりつけてゐる結果だ。彼等の其の後の言動、第二回の検事訊問でも判る。五名が可愛そうだ。昨夜安藤氏に此の事を云ふと 事実を判然とさせねばならない。無実の罪に問われるとなれば五名が可愛そうだ″との意見。僕も証人に立てば事実を陳述し五名の嫌疑を晴らさう。分所長として僕の責任だ。人間の責務だ。敢く迄も戟ふ」
 巣鴨住まいに慣れてきたのか、同じように囚れの身となっている高位高官、かつての日本および日本軍の指導者たちの性格などを書き残す余猶(よゆう)も出てきたようだ。

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編集者 (代理投稿)

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