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捕虜と通訳 (小林 一雄)第二部・34

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通常 捕虜と通訳 (小林 一雄)第二部・34

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2008/10/20 7:41
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 思い出対談
   覚えなき戦犯の汚名に泣いた旧日本軍人と・5

 小林 捕虜を守ることが日本側の義務でしたもんね。時々、収容所へ石を投げる地元の人がいたが、あれには弱りました。当時の鬼畜《=残酷で、無慈悲な行いをする》米英の思想下では当然、予想される現象だったんでしょぅが、日本側の職員としては大変、弱りましたね。捕虜に万一のことがあっては…と所長以下、苦心されていましたね。

 峰本 まあ、あの時代、いろんなことがありました。終戦を機にたった一日で収容所の主人公が入れ変わったんですから、私ら軍人は気が気でなかった。過去、どんなに親切にしていても、日本軍人というだけで復讐 (ふくしゆう) されかねないと衆議《=多人数で相談》一決、あの八月十五日の終戦の日は、はやばやとあらゆる書類を焼却し、軍人だけ兵庫・生野町の駅前旅館にかくれていました。米など食糧もたくさん車に積んでかくれましたが、それらは間もなく、日本の警察がどこかへ持ち去ってしまいました。いやな思い出ですね。

 小林 話したら、きりがないほどいろんな話題はつきません。戦時中という異常な事態の中で起きた事実ですが、よい思い出も、悲惨な思い出も、すでに半世紀前のことなんですね。すべては戦争のもたらした事実なんですね。二度と繰り返してはならない歴史のひとこまだったんです。わたしたちのこの体験が、二十一世紀に暮らす〝未来の世代″にプラスとなって生かされるよう祈りたい気持ちです。

 峰本 戦争は起こすべきではない。平和な未来が持続することを心から願いたい。私らの体験が、未来に大きな光となってほしいものですね。

 小林 そうです。峰本さんのように誤った裁判で受刑された方の苦しみはもうご免です。最近NHKテレビ特別番組で、戦時中のアメリカ兵捕虜が食を与えられず、紙片や布をちぎって食べた酷い収容所の体験を話していたと発言していたのを見聞しました。私としてはそんなことはあり得ないと信じ、すぐNHKに「裏づけがあっての発言だったのか」と問い合わせたところ、「アメリカ本土で取材中、元捕虜の発言をそのまま録音放送したに過ぎない」というんです。「もっと裏づけをとって確実なデータで発言すべきだ」と文句をいってやりましたよ。あれやこれや…で、少くとも日本本土の捕虜収容所の一つである、われわれの勤務した収容所では、こうして戦後、彼我の友情がつづいていることを訴え、あの苦しい戦時中でも敵国捕虜に人間として対応してきた証にしたいと情熱を燃やす気になったんです。もちろん、戦争裁判の一方的なあり方、その結果、善意の人たちが悲惨な思いを体験した事実も卒直に残し、次世代の人びとに知ってもらいたいという欲も起きましてね。

 峰本 あなたの若者のような情熱が、何としても実現するよう、期待します。私も洗いざらい体験したことを話しますよ。

 《峰本さんの顔は生き生きとし、話すにつれて眼も輝いてきた。苦しかった過去、あの時代、あの捕虜収容所で体験した苦労や、一面では愉快なできごとが、戦犯時代の辛さ、惨めさと交錯して、複稚な思い出となったことは否めない。しかし、いまとなっては、すべてが懐しい過去として次々と浮かび上がってきたのだろう。私自身、峰本さんの話が呼び水になって、久しぶりにあのころのことが明瞭《めいりょう》に思い出せたことは幸いだった》

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編集者 (代理投稿)

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