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チョッパリの邑 (10) 椎野 公雄

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通常 チョッパリの邑 (10) 椎野 公雄

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/5/7 7:47
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
10
 朝鮮の遊び

 家の手伝いをしながらも、私とて遊び盛りの子供である。
 特に冬場は畑仕事がないから、寒さにさえ慣れてくれば外で思いっきり遊ぶことができた。

 氷の世界ですることは一つ、ただただ滑ることである。といってもスケートの経験はまったくないし、靴も未だ買って貰えなかったので、自分で作ったソリを道具にして滑るよりない。
 ソリは大きな下駄《げた》状で、上に座って両手にストックを持って漕《こ》ぐ。下駄の歯にあたる部分には、最初、太い電線を二本打ち付けて這《は》わせたが、どうしてもエッジが効かず横滑りしてしまう。そこで父に頼んで、歯になるようなL字型の鉄片を二本、工場で探してきて貰い、その先を鑢《やすり》で丸くして取り付けたところ上等なソリが出来上がった。ストックは五〇センチほどの棒の先に五寸釘をうまく挟み込んで作ったものである。

 しばらくは、こうして作った自家製の道具を抱え、毎日のように隣の宮島君など、友達数人と一緒に出かけては氷滑りに精を出していたが、やはりスケートでないと物足りなってくる。
 父に二度、三度頼むと、ようやくズックのスケート靴を買ってくれた。

早速、喜び勇んで出かけたものの、歯が長く細いロング・スケートは氷の上に立つだけでも難しい。
 三、四日難渋した或る日、スッと立って滑れる夢をみた。翌朝玄関前の用水桶の氷に登ってみると、不思議なことに易々と立てるではないか。それからというもの、スケートで明け暮れる毎日になって腕もめきめき上達していった。

 こうして冬はもっぱらスケートであるが、家の周りは開けて遊び場所には困らない。
 鬼ごっこ、陣取り合戦、缶けり、パチンコ、竹馬など内地でもよくやったクラシックな遊びは勿論のこと、戦時中の遊びとして流行った潜水艦ごっこ、また朝鮮特有の紐《ひも》の長いブランコや両端に立って飛び跳ねるシーソー、それにチェギ、モッパイ、トッキなどと、することは山ほどあって、どれもが面白く、学校から帰ると家の仕事がない限り日が暮れるまで、時間を惜しんで遊んだものである。

 チェギとは穴の開いた硬貨二~三枚を重ね、鶏の尻尾の羽をちょうど羽子板の羽根のように何枚か紐で結わえ付け、足を内側に曲げながら踵《かかと》の横で蹴《け》り上げ、何回できるかを競う遊び。上手くなると曲芸のように足の各部を使って何十回も続けることができる。
ちょうどサッカーのリフティングと同じで、今にして思うと朝鮮人・韓国人がサッカーに強いのも、ニンニクや人参によって強化される体力ばかりでなく、子供の頃からこうした足技を身につける機会が多いせいなのかと頷《うなず》けるのである。

 モッパイとは大型のパチンコといえるもので、一.五メートルほどの紐の中央部に網状の部分を作って石を載せ、紐の片方を手首に結わえ付けて、もう片方を離しながら挺子《てこ》の原理で石を投げる。かなり遠くまで石は飛ぶし、上手くなると木の上の鳥も落とせる代物である。
 
 またトッキは一〇~二〇センチの棒の両先を斜めに切り落とし、地面の上に置いて、切り落した端を五〇センチほどの棒で軽く叩き、跳ね上がったものを更に打って遠くに飛ばす競技で、距離を競ったり、野球のように一定の場所を何回打って回ってくるかを争うもの。
 竹馬も長いものは数メートルに及ぶといった具合だし、シーソーやブランコにしても、朝鮮人の遊戯《ゆうぎ》はどれもが空高く飛んだり跳ねだり飛ばしたりと、何とも不思議なものばかりだが、やり始めたら面白くて止められない。お陰で身体のバランス感覚は格段に良くなったし、集中力も高まった
のではないだろうか。

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編集者 (代理投稿)

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