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心のふるさと・村松 元少通生らが寄せる村松への思い 22

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通常 心のふるさと・村松 元少通生らが寄せる村松への思い 22

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/2/12 7:40
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 コウリャン飯と米の飯 その4

 でも、区隊長殿は只立ち去ってしまったのではなかった。数十分も経ただろうか、再び見えて「其処にいる八人、こちらに来い」 と言われ、我々八人はどんな罰をうけるのかと覚悟をしながら、屠所に引かれる羊の如く付いて行った所は学校の小使い室であった。
 其処で我が日をを疑う様な光景を見たのである。入校以東一度も見た事もなく夢にさえ見た眩しい程に白い米の飯が盛られて湯気を立てている。其のうえ熱い味噌汁まで……百姓の子で食べ放題食っていたとは言っていたが、実は貧乏百姓、一年中麦飯であって、お節句や年末の年とりの晩でなければ本当の白米だけの飯は食えなかったのである。

 怪我の功名などと言っては不遜であるが、真面目な戦友達が皆コウリャン飯を食べているのに、本来罪人である筈の俺たちがこの待遇、区隊長殿、本当に申し訳ありません。

 八人皆同じ思いであったろう。休憩時間が終わって出発したのはもう夜中である、腹は満たされたが暗い道を歩いていると、今度は睡魔が訪れる。

 歩きながら、とろとろつと眠ってしまう。肩から銃が滑り落ちそうになって「ハッ〃」と驚き目が覚める、一分も経ないうちに又とろとろ、うとうと、銃が滑って「バツ〃」と こんな事を何度も繰り返す、皆んなの靴の裏の鋲と道の小石とで「パチパチ」と出る火花が何か幻想的な思いを誘い、歩きながら夢うつつ、靴も重いが銃も重い、子供用の鉄砲ではない。正真正銘の九九式短小銃である。十四歳の子供にはちょっと重すぎる。何貫目あるんだろうかこれは…。

 こんなことを書きながら、今頃気が付いた事であるが、生来俺の肩は右肩が著しくさがっている。
 銃が滑り落ちるのは、このせいだと!戦友達の中には「北原の肩がひっかしがっている事なんか始めから知っている」と言うかも知れないが、居眠り行軍で銃が滑り落ちて困っていた事まで見抜いていた者はいないだろう。

 村松に着いたのは、まだ明けきっていない早朝だった。歩き乍らよく眠った為か学校が近付く頃は、すっかり目覚めて元気になって来た。
 誰も高熱を出した者もなく文字通りつつがなく行軍は終わった。
 有難い事に学校の嬉しい思いやりか、風呂が沸かしてあって皆で昨日からの汗を洗い落としで寝床に入った。

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