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歌集巣鴨・2

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通常 歌集巣鴨・2

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/7/11 7:46
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

  春

 窓の外にかがよう春よ言もなく鉄扉拭きゐる囚人われは      谷本 俊一

 薄明におのが卑小を歎くとき宇に韻(ひび)かふ鶯のこゑ        同

 竹筒にさして置きたる白梅の蕾一つが今朝開きたり      立石 善次
 
 春暁は床臥し寒しうらうらと天(あめ)に雲雀の鳴きそめしかも      桂 定次郎

 風もなき春のうらら日照りしけば土手の小石もまろび落ちつつ      梨岡 壽男

 石垣の石をめくりてこの夏の陽覆とすべき南瓜蒔くなり      安達 孝

 假釈放(ぱろーる)の事にふれつつゆく庭の櫻新芽はふくらみにけり      宮武 都夫

 春されば日の本なれやうらうらと囚屋の庭もさくら花咲く      加藤 三之輔

 限りなくわが思慕のびよ黄昏を桜花びら地(つち)に浮きたつ      大槻 隆

 華やぐ日吾が生(よ)にありやチューリップの朱は燃えたつ牢の狭庭に      下田千代士

 チューリップ花閉ざさむとする夕べ雷どよもして行く春の雨      炭床 静男

 生(よ)を厭ふこころ萌して外に佇てばつつじは赤く咲き揃ひたり      大城戸 三治

 布団乾しに出でたる庭に一むらのさつきの花のさゆる紅(くれなゐ)      保田 直文

 塵芥車押しゆく吾に沈丁花匂ひながれて閑(しづ)かなる街      大神 善次郎

 病む友の枕辺にフリージャの花立てて講和も近きニュース聞かせぬ      林 廣司

 薄切れのうどの酢味噌を食みければ気もすがすがし春の香りは      清水 利行

 徒らに日は過ぎゆきて君を思ふひとやの宵を木瓜の花散る      田中 勘五郎
  
 音もなく春の雨降るアメリカの旗日の午后を家に手紙(ふみ)書く      野口 悦司

 手折り来し木蓮の花香を放つ獄の小床に身をのべし時      樋口 良雄

 よきものはほとほと絶えて此の國は春の花のみあえかに咲ける      伴 健雄

 五年の苦難に生きて今日久に天皇誕生日の羊羹を食む      橋本 壽男

 雨宿る積りにや濡れし子雀のつと寄りし花の蔭に動かず      関 一衛

 何時しかに心和めり小雀の羽根ふるはせて餌を受く見つつ      西山 清

 小鳥の家窓はさされて内ごもる声々ゆゑにわが佇てりけり      梨岡 壽男

 春深き獄庭(には)にたまゆら影さして大き鴉が飛びゆきしかな      高橋 丹作

 穴に住む獣のごとく眼はあけて春の嵐をわびしみゐたり      宮武 都夫

 新しき世にさからはず生きむと思う春の夕べの雲動きつつ      本間 八郎

 反逆のこころゆすりし春雷のはや遠のけば涙ぐみをり      福岡 千代吉

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