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歌集巣鴨・33

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通常 歌集巣鴨・33

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/15 10:16
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 支 那 (1)
    
 季節の流れ

 捕はれて八重の潮路を来(こ)しかども我の命はなほここにあり      桂 定治郎
                               (上海四首)

 手中(たなうち)に数かぎりなきみ佛をわれは畫きをり春の獄(ひとや)に        同

 古の遠流(をんる)の臣を数へつつ春の獄(ひとや)に心足らひぬ        同

 捨て切りて今は我なき気軽さやこの安けさや今日も日の暮るる        同

 漲るは春の水かもほのぼのと鄱陽(はやう)の湖(うみ)に朝あけわたる      伴 健雄
                                  (上海への船中)

 門に立つ若き歩哨の影長く搖ぐともせず春の日落つる        同
                          (上海四首)

 丘の上の櫻木立のしづもりに花塵(くわじん)ひとしきりおさまりにける      桂 定治郎

 夜くだちに十六羅漢さ乱れて寝言歯ぎしり春閑けにけり      永田 勝之輔

 須磨の櫻見むと思ひし今年さへ蚊帳つる夏と早やなりにけり      安野 秀岳

 夏の朝涼しきものは椰子の葉ゆかつがつ落つる露の白玉      増山 喜平
                               (ハノイ)

 人影の絶えし眞晝の獄庭を黒き蝶一つ大きく舞へり      長谷川 稔
                         (上海八首)

 鴨跖草(つゆくさ)に鳴ける蛙をききとめて一夏(いちげ)の月夜(つくよ)さやかなるかな      桂 定治郎

 秋雨の五日あまりを聴き寂びて花櫚(かりん)の木(ぼく)に妻が名彫りぬ        同

 冬を越すたきぎの料と刈り貯めし莠が中の秋萩の花      今野 逸郎 

 冬江(ふゆがわ)の水門に泊てしまがね船朝くだるらし霧笛鳴りつつ      大西 正重

 朝霜のひろ野のはてに見はるかす上海のかたはたゆたふ黒煙      梨岡 寿男

 冬木々に集(つど)ふ小鳥は身を寄せて日のめも寒し片照りにけり      桂 定治郎

 枯れてゆく寂しさならず冬ざれの竹の笹葉を見守りしかも        同

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