歌集巣鴨・9
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編集者
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た よ り
故里のくらし偲びて面会も直ぐとは云はず無事のみ報ず 清水 利行
なんとなく君の便りの来る心地しきりにすなる秋晴れの朝 谷口 武次
久にして受けしたよりは掌にのせて重さたのしみ封を切るなり 小牟田 幸
妻にのみ出す文続き方々にできし不義理は目をつぶるなり 田代 友禧
護摩たきてひた待ち居るといひくるる母の便りを繰り返し読む 井野 雅治
今日も亦母の便りに勵まされ淡きのぞみを持ち続けむとす 星川 森次郎
不孝の子吾れに体をいとへとぞのたもふ母は七十二に在す 立石 善次
悪戯の日にけに増すと送り来し吾子の手形にわが手重ねぬ 内田 泰司
片言で別れし吾子が小学校に入学せりと便り届きぬ 橋本 孟
うつつには再(ま)た逢ふよしもなき妻を身近に想ふ吾子の文見て 伊藤 義重
あげまきの汝が面影の眼にありて乙女さびたる文になじまず 谷口 武次
(衣類を妻のもとに送りて)
法廷の苦患な知りそスェーターの血膿(ちうみ)のあとは気づかず洗へ 中原 獅郎
傍らの子等が熟睡を目守りつつ此の文書くと遠妻便り 小牟田 幸
「何時までもあなたの帰り待つ」といふ妻の便りに涙流しぬ 宮崎 博
想はする文字はなけれど読み返す妻の便りに滲む寂しさ 足立 福三郎
吾にだに愚痴を告ぐれば心癒ゆと悲しき言を妻の添へたる 田代 友禧
米俵を積みて数ふる舅姑(ちちはは)を見つつ嬉しと妻は書き来ぬ 出口 太一