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歌集巣鴨・48

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通常 歌集巣鴨・48

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/30 7:38
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 母の手紙

 執行の予感に私物整理しゐたるとき投げこまれたる母の手紙よ      故田口 泰正 
                               (巣鴨四首)

 まとまりし病中詠なれど父母に書き送るのはやめむと思ふ        同

 家妻に死刑確定を報らすとき「不忘此恨(ふぼうしこん)」と書き添へにけり      炭床 静男

 丹念に妻に書きたる初便り字数超過と返されにけり        同

 寂しさに耐へつつ強く生きてありと死刑囚(とも)の便り来ぬ霙降る日に      星野 多喜雄
                                       (上海)

 二月(ふたつき)振りに受取りたりし妹の手紙(ふみ)は只平凡に家況告げ来し      故井上 勝太郎
                                       (巣鴨十二首)

 老母の病ませ給へば家妻は子を背負ひつつ手綱とるてふ      故藤中 松雄  

 命すでにきはまりをれど今日もなほ吾子のことなど便りする妻      北田 満能

 山茶花の机の上に匂ふさへ淋しと妻は詠(うた)ひよこしぬ      友森 清晴

 俸給を初めて受けしよろこびを傳へ来にけりあはれわが妻      鳥巣 太郎

 しもやけの手が痛むとふわが妻のながきたよりをひろひ読みつつ      故井上 乙彦 

 三年余を離(さか)りて居ればわが妻は口紅(ルージュ)おしたる手紙(ふみ)おくりこし        同

 なかの子が送りくれにし静物の絵に金賞の印附きてあり      佐藤 吉直

 世のことは空しきものと知りそめて父の手紙に泣かじと思ふ      故平手 嘉一 

 絞首刑受けし不幸を父に詫ぶと遺書かきゐつつ涙ぐみとり       越川 正雄

 幼な児の遠くかすかなる泣き声を遺書かき止めてしまし聞きをり      瀬山 忠幸

 残生(ざんしょう)を子らにかたむけ書く手紙百五十字に制限されつ      森 良雄

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