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歌集巣鴨・49

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通常 歌集巣鴨・49

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/31 7:36
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 最後(つひ)の面会(あひ) 

 育ちゆくさまを一目を見せむとて連れ来し吾子を椅子に立たしむ      平尾 健一
                              (巣鴨十八首)

 かぼそかる喉(のみど)鳴らして水のめるこの子の命永遠(とは)に生かしめ        同

 去りゆくを廊の果てに逆光に立ちし妻子(つまこ)をかへり見につつ        同

 子らを育て努め果して来む君を彼岸に待つと言(こと)に遺しつ      同

 冬の雨にはるばると来し老妻は金網越しのわが顔みつむる      故井上 乙彦

 帰りゆく妻の肩まで丈のびしオカッパ髪の吾娘(あこ)をかなしむ        同

 一年を秘めゐし覚悟春されば過ぎにし如く妻に語りぬ        同

 旅遠く最后(つひ)の別れに連れられし子は野球帽かむり眠れる      森 良雄

 最後(いやはて)の別れと知らず小さき手を母に委ねて打ち振る吾子よ      出口 太一

 相見ずて十年(ととせ)を経たる吾妹子は振りかへりつつ網の彼方へ      手塚 敏雄

 見せまじと努むる手錠に目をとめて涙し給ふははそはの母      久保 久吉

 はるばると訪ね給ひし老母は近う寄れよと涙も拭はず      故藤中 松雄

 命ある我に一目を会はせむと孫の手曳きて父は来ますも      冬至 堅太郎

 六年前買ひ與へける黒無地の単衣よそひて遇ひに来し妻      佐藤 吉直

 金借りて夏の盛りをはろばろと妻子は来しかわれに会はむため      鳥巣 太郎

 やせたりとはや涙ぐむ妹に「お前もやせた」と網越しに云ふ      瀬山 忠幸

 駆けつけし妻は網越しに今生の礼述べむとて泣き崩れけり      福島 久作

 ではこれが最后と吾娘(あこ)に告げし時我はや立ちて顔見ざりけり        同

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