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歌集巣鴨・45

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通常 歌集巣鴨・45

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/27 8:20
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 静 寂

 判決を批判し合ひてつつまりは愚痴の羅列に墜ちてゆくなり      炭床 静男
                            (巣鴨十三首)

 執行の近き予感にひかへゐし齲歯の治療年明けて為む        同

 父母にかかる嘆きを負はしたる吾が罪業は消ゆることなし        同

 永遠の歴史の中の一点と人知らぬままわれ過ぐらむか      北田 満能

 糸杉の揺らぐ静寂(しじま)に耐へゆかむ小暗き房に生命しあらば      上新原 種義

 守り来し童貞を清(すが)しみて月の照る夜にわれは死なむか      久保 久吉

 處刑されし友の机に爪書きの「三日母さんが来た」と文字うすく見ゆ      瀬山 忠幸

 月明き牢に観音経を誦(づ)しませし本間将軍逝きて四年か      白倉 刀禰男

 國挙げて血の純潔を叫びたる声は男性の嫉妬なりしか        同

 逝きてはや二月(ふたつき)経たる網棚の塵に残れる君が指跡      出口 太一

 極まりゆくおのが命の明け暮れに「赤光」を待つはや一ヶ月      鍵山 鉄樹

 責は負ふと古き倫理を固執する心の奥処を汝知るらむか        同

 先人の幾多の歎きこもらへる壁に背をよせ亡友(とも)思ひをり      田代 敏雄

 しとしとと降る雨音を聞きゐつつ悔多き身を横たへてをり        同

 この夏はつづけて歯を病み腰いたみ芯から老いの進むにあらむ      越川 正雄

 今日もまた何事もなく過ぎたるを喜びあひて友と碁を打つ      神本 啓司

 「世の父」と宣らせしところ身に沁みて讀経のあした涙ながるる      福島 久作

 天井の隅の小ぐもが白き蛾を襲はむとする今の緊張      佐藤 吉直

 佃煮を念入れてかみぬカルシウムに老いづきし歯も強くなるべし        同

 翼断面と風圧曲線を説きし後の郷愁に似たる淡き感傷        同

 いつもいつも網棚の奥に顔を出す鼡はいたく大きくなりぬ        同

 たぎりたつ心静むと吸ふ煙草幾度となく火はつけにつつ        同

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