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歌集巣鴨・36

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通常 歌集巣鴨・36

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/18 19:58
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 帰 国 

  支 那 (4)

 今は同じ國民ならぬ韓國の友ら涙し見送りにけり      田中 勘五郎

 過ぎし友の骨を残してたつ旅は海の面罩めて霧たち迷ふ      梨岡 寿男

 ぬばたまの黒髪ながく相逢はぬ妹を念ひつつ船路たぬしも      宮迫 忠久

 船は早やみ國に入りぬ島も海もあやにくすしく輝きわたる      井部 重郎

 隼人の薩摩ヶ嶽は今日見むと如月朔日の朝明にたつ      梨岡 寿男

 おほみおやの天降りましけむこの見ゆる日向の嶽に敗れてま対ふ      今野 逸郎

 懐しの祖國は近し海原に吾を迎へむと群れ飛ぶ鴎      下地 恵修

 富士いづこ伊豆の山々雲たれておろがむ男子声もなきはや      井部 重郎

 夜明くれば「井桁に永」の舟印舷窓にありて日本の声す      小畑 千九郎

 傷みたる心に踏めどふるさとの土は温(ぬく)とし帰り来りぬ      伴 健雄

 如何なれば斯く涙もろくなりたるか街の姿のことごとに泣く      小畑 千九郎
                             
 焼跡に頭を垂れて迎へくれぬその手にぎりてひたに泣きたし      渡辺 勝二

 囚はれて帰り来れば護送車に鳴呼同胞(はらから)が高く手を振る      加藤 三之輔

 掌を合せ並みたちて迎ふ媼も見ゆ何とは知らね涙ながるる      梨岡 寿男

 戦犯と知りて手を振る人もありかかはりもなく過ぐる人もあり      宮崎 修司

 横浜の市中に見たり日本人立入禁止の白き立札      菅谷 瑞人

 還り来て護送車の上に今拜す人影もなき明治神宮      今野 逸郎

 更めて塵を拂ひて渡しけり戦闘帽は最后としたり      寺田 清蔵
                  (軍装品没収二首)

 ねもごろに袖折りたたみ渡しけり武勲を秘めし亡友の外套      宮崎 修司

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