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歌集巣鴨・32

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通常 歌集巣鴨・32

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/14 7:58
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 馬 来

 星港は程近からむこのわたり水は濁りて海蛇の浮く      城 朝龍
                         (往航船中)

 黄草原見も斑らなる下萌えにわが葉の夏は再たも来にけり      宮脇 文雄
                       (星港オートラム二首)

 ゆるぎなき大地に立ちて何の苦ぞとこの朝風を胸一杯に吸ふ        同

 歌会もつこともありけり朝風の吹き来る獄の庭先にして      藤井 富夫
                            (ビルマ)

 ちかちかと跣足に痛し照らふ日に歩道は焼けて房につづけり      吉井 啓祐
                           (星港オートラム)

 陽を反(か)へす手錠の腕は組みゐつつ向日葵の花の前を通りぬ      若松 斉
                           (星港チヤンギー二首)

 監房の所在なさには寝てゐつつ壁に足などのせかけてゐる        同

 大空は夕茜して暮れゆけば闇の空虚(うつろ)に半迦くむ吾      藤井 富夫
                               (ビルマ)

 新しき繃帯ぎれをかすめきて夜の更けてより縫ひものをする      若松 斉
                      (星港チヤンギー三首)

 綱窓に押し照る月の光(かげ)掬めば暫くは掌をひろげてをりぬ        同

 ここに住む同胞ありて差入れくれし情の品をじっと見つむる      藤井 富夫

 筑紫なる大野の山にたつ雲を見つつも母の吾を待ちまさむ      鬼倉 典正
                          (星港オートラム)

 常(いつ)よりも早く目覺めし房の中歯の金冠はもろく落ちたり      若松 斉
                        (星港チヤンギー三首)
 
 恥多き己れ悔いつつ夕まけて埃つもれる経をとり出(いだ)す        同

 生きの日の貧しさつぐる吾が妻に最后の医書を賣れと書きたり        同

 淋しきは小雨降り込む夜の房に狂ひし友の我が名呼ぶとき      横田 昌隆
                       (星港オートラム二首)

 今の苦をのがれ得むかに欲る移管巣鴨もただに獄と思へや      吉井 啓祐

 その昔御朱印船の通ひたる呂宋の島を目交にして      城 朝龍
                     (帰還船中二首)

 やがて会ふ友思ひをり船艙の小暗さのなかに汗にあへつつ      鬼倉 典正

 悪びれずタラップを下り夏の陽の祖國の土に歩を運びたり        同
                            (横浜埠頭)

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