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歌集巣鴨・24

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通常 歌集巣鴨・24

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/5 7:57
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 逮 捕

 われひとり深き怖れを抱きつつ白晝(まひる)の道の片側を行く      谷本 俊一
                                  (内地)

 いま幾夜此のグワム島の草にねて銀河のはてをひとりたどらむ      古木 秀策
                                 (グワム)

 敗戦の残務作業を終へし今日戦犯指定の通報を受く      永田 二生
                          (チピーン)

 幾とせの思い秘めたる軍服を戦友(とも)に托せり妻へ形見と      寺田 清蔵
                                 (支那)

 青春よ事業の夢よ護送(おく)らるる夜汽車にたのむ一瓶の酒      大島 宗彦
                               (内地八首)

 獄にゆく父とは知らじ若き娘は汽車に別れの白布振りをり      吉田 喜一

 曳かれゆく我とは知らず家土産(いえづと)をねだりし昌代思はゆるかも      中馬 礫

 言ひ残す言葉も絶えぬたらちねと酒くみ交はす夜はくだちつつ      大島 宗彦

 今生の最后(つい)の別れと思ほえて人知れず母の御手に觸れにき      中馬 礫

 再びは逢へじと思ふ我が母の皺多き頬を傳ふ涙よ        同

 おびえつつ生くるいのちもしかすがに地下百尺のつかれに眠る      毎田 一郎

 腹空きて寒さ身に沁む留置場にぬすびとと共に十日過しぬ      山上 均

 護送されて上海に至る
 プロペラの音弱まりて街の灯のながるるなかに飛行場ありぬ      松井 正治

 夏の夜のざわめく街を車曳きて関はりのなき我等が群ぞ      富高 増木
                               (厦門)

 こころなき敵吏の手もて剝がれたる襟章は土間に落ちて光れる      寺田 清蔵
                               (支那二首)

 髯もおとし髪もつみたるわが顔は尿桶の中に若やぎで見ゆ      加藤 三之輔

 吾は獄に汝(いまし)は家に帰るべし焼けし都に日の入らぬ間に      桂 定治郎
                              (妻へー内地)

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