@





       
ENGLISH
In preparation
運営団体
メロウ伝承館プロジェクトとは?
記録のメニュー
検索
その他のメニュー
ログイン

ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失

歌集巣鴨・46

投稿ツリー


このトピックの投稿一覧へ

編集者

通常 歌集巣鴨・46

msg#
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/28 8:35
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 梟 の 心

 既にして関りなき人の世の賑ひ見つつ護送(おく)らるる我は      冬至 堅太郎 
                            (巣鴨二十首)

 わが髪を入れて遺すとこのひと日ちひさき紙の筥貼りにけり        同

 味噌汁の白葱しみて香にたてば生きたき心抑へかねつも        同

 友二人減刑になりて去り行くを扉(と)の隙間より見てゐたりけり        同

 未亡人救済事業にわが縣が先駆せるとふ記事を冩しぬ        同

 最后(つひ)の日も近しと思ふ小机(をづくえ)に埃かむれる「善の研究」        同

 わだつみの磯の平(たひら)の大き巖昏れゆく如く我は死なむか      楢崎 正彦

 時折は母に対ひてしみじみと名のみの妻の歎きいふらし        同

 處刑場(しをきば)につづく寒夜の石廊を曳かれゆく思ひ我をよぎりぬ        同

 武士道は死ぬことなりと「葉隠」を人に説きたる昔もありき      友森 清晴

 夕まけて風や出で来し玻璃窓の網目にさせる折鶴ゆるる      鳥巣 太郎

 何となく気がねをしたる面持に減刑されし人ら出でゆく        同

 戯(たはむ)れに丸めし毛布撫(さす)りつつ児の名を呼びゐし獄友(とも)は狂ひぬ      森 良雄

 同室の友刑執行を確認せらる
 枕辺の壁に珠数吊り眠りゐる丸刈り頭をわれは見下(おろ)す        同

 乏しかる遺品のなかにつる折れし眼鏡は紙に包み添へけり        同

 わだつみの底ひに棲める眼なし魚おほかたの世に忘れられつつ      平尾 健一

 この晨(あした)つづけさまに地震(なゐ)おそひ来て看経(かんぎやう)の身をゆすぶりやまず        同

 空(くう)の理(り)を説きあかします師(きみ)がこゑ訥々(とつとつ)として心に迫(せ)むる        同
                                            (田島隆純先生)

 執着(しうぢゃく)の濃き面持をするならむと頬の硬(こわ)ひげ撫でつつ思ふ      同

 あからひく光に向ふ梟の心まどひをひと知るらむか        同

  条件検索へ