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歌集巣鴨・52

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通常 歌集巣鴨・52

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/9/3 8:32
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 巣 鴨(その一)

 いつまでをかくは歩りかむ命ぞと無慙なるまでに貌は見てゐき      梨岡 寿男

 手錠されてひとは歩める日蔭路にヒマラヤ杉の花こぼれゐつ      小林 逸路

 降るごとき朝のひかりに一團のつながれしままの死刑囚歩める      内田 五郎

 やがては殺されてゆく人達よあれあのやうに片手を振って      谷本 俊一

 両の手に食ひ入る如き君が枷解かむすべなし吾が手届くに      下田 千代士
                          (於三六一病院)

 手枷して面会してゐる極刑の友の手頸の細りしことよ      佐々木 勇

 死刑囚の減刑嘆願
 天つ神に願とどけと端坐して字劃正しく我が名したたむ      東木 誠治

 弦を合はす音にまぎらし覓め得たる影に短き言はおくりぬ      田代 友禧
                            (慰問演奏)

 比島死刑囚佐々木春夫君の便り
 絶筆と或はならむか二度よみて丁寧に綴りおく俘虜通信紙      小林 逸路

 このメモを使ひし君は既になしボアキンといふはいかなる土地ぞ      大谷 房吉

 異国より還る友等に幸あれと畳に差しあり死刑囚の文      中村 安蔵

 かなしみの極みにあれば死囚らが詠へる歌はかくもきびしき      栗原 吉生

 鉛筆の芯なめつぎて灯の暗き夕を寫す君が死の歌      穐田 弘志

 死の棟に移されゆきし友の品形見と分けつ底冷ゆる夜を        同

 刑執行の噂しきりなり小夜更けて滲み入るごとく雨降りつづく      毎田 一郎

 執行の噂流るる秋雨の夕べを独り房にこもれり      村井 正明

 群鴉棟をはなれず啼きしきる處刑の噂傳はりし日を      最上 善一郎

 逝かれたる八人の中に気づかはれし菅沢老の名をも聞きけり      片山 謙五

 見て来たと云ふ人に會ひて棺桶の数執拗にたしかめむとす       大島 紀正

 心あるもののごとくに散る公孫樹刑死の友と語りしもここ       藤井 正市

 讃美歌と誦経の声のこもらへる朝の五棟は去りがてぬかも      額田 坦

 死にゆける友の幾人かくらしける房としもへば安寝しなさぬ      中村 安蔵

 刑死せし友も倚りけむ房壁の汚染(しみ)に射しゐる夕日の光      浜本 次郎

 昨夜(よべ)逝きし囚友(とも)の妻子が泣きぬれてグリーンゲートを去りがてにをり      浅利 英二

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