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歌集巣鴨・8

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編集者

通常 歌集巣鴨・8

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/7/20 9:45
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 作 業

 足もとの落葉ふきあぐる木枯の寒けき朝を列に並べり      中原 獅郎

 刺すばかりひゆる朝の舗道(いしみち)に水耕班のトラックを送る      鈴木 義輔

 死棟出で来し人にかあらむ列の中にきわだちて白き面ざしの      田中 徹

 白茶けて堅くなりたる靴履きて作業の列に今日も並びぬ      高橋 丹作

 あわれ吾が箒に触れしこほろぎはしばらく経ちて跳びたちにけり      福島 久作
 (清掃班二首)

 石蕗の咲きたる庭を掃き清め物思ひをり心しづけく      最上 善一郎

 くろがねの扉はいましひらかれぬ巷明るき春の大路に      本間 八郎

 労役の鍬の手止めて老母(おいはは)と他人(ひと)の姿を暫し眺むる      森 文一
 (農耕班)

 堆きパレット材料の山一つ忽ち消えぬ製材機が来て      橋本 孟
 (荷枠班)

 銃口の威圧を背(せな)に感じゐて有刺鉄線(バリケート)張りゆくくもり陽の下      岩沼 次男

 有刺線の柵の内外(うちと)に声ひくく恋愛をする人を見にけり      安達 孝

 石割の塵を拂ひてふり仰ぐ空寂しもよ眞日は高きに      長谷川 義男
 (砕石班二首)

 重き石運びて荒れし掌に花一片(ぺん)を摘みて帰りぬ      片山 謙吾

 ポケットの妻の手紙を時折に思ひ出でつつ烙鉄を打つ      中庭 顕一
 (鍛工班二首)

 煤煙のしじに流るる下にして南瓜は黄なる花をつけたり        同


 雄心の消ぬと揺ぐとあらなくに菊を育てて日を送るかも      伴 健雄
 (花園班)

 霜を踏みて瓦礫曳きゆく老囚の車は重し石畳路      石松 又助

 病院の廊下掃きて集めし塵の中に白蟻が一匹うごめきゐたり      小林 宗平
 (病院六首)

 くりかえし床(ゆか)の靴跡拭きつづけ夜は針金のごとく眠りぬ      大石 鉄夫

 TB菌紅(あけ)鮮かに視野に出づ我が牢愁のひらくにも似て      森 良雄

 喀痰の結核菌を染め出でしとき細りし君がおもかげにたつ      宮武 都夫

 ラッセルを聴き取りながら術もなく言葉濁してわれは立ちにき      田代 友禧

 呆然と佇てゐる狂者憫(あわれ)めば萎へし魔羅も洗ひてやりぬ      樽崎 正彦

 秋雨に濡れて働く我々に一人の婦警が会釋しにけり      酒瀬川 眞澄

 寂しければ今宵は汽罐につきをりて機械の如く炭殻(がら)かき出だす      足立 福三郎
 (ボイラー班)

 たへがたき忿りに耐へて米兵が遊びに投ぐる球拾ひつぐ      福山 勝好
 (ボーリング班)

 双手あげて検査の列に従へり鳩の群れ舞ふ空は昏れつつ      田中 徹

 労役終へ帰りし房に吾一人壁に向ひて作業衣換ふる      長田 邦彦

 格子窓ゆ差し入る月の光(かげ)冴えて夜業の人等帰り来りぬ      野口 悦司

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