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歌集巣鴨・34

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通常 歌集巣鴨・34

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/16 9:18
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

  支 那 (2)

       生活の日々

 若茄子を朝に炊くと取り出でて水にひたせば透る紫      丸山 茂
                      (上海二十四首)

 水道の蛇口に奔る水音を清(すが)しと聞きて朝に米とぐ        同

 片割れの月かげ残る溜池に豆腐作りの水を汲みたり         同

 うちけぶる草に雨降るひねもすを隣に絶えぬ米搗の音      伴 健雄
                          (自営精米)

 まがね吹く鞴の焔青く燃え鍛冶場の晝をわくら葉の散る      大西 正重
                              (煉工)

 申辯書ひとり書く夜は更けゆきて枯野をわたる秋雨の音      門屋 博

 病篤き囚友をみとりて今宵またひとりしみじみ秋雨を聴く      長谷川 稔

 幽囚の哲理を説きて寝し友の夢路羨しき小夜嵐かな      長谷川 寿夫  

 寝返りの鎖の音に夢さめて房の小窓に星光冴ゆる      下地 恵修

 風寒き囚舎の宵を黄にともる蝋の涙の凍りけるかも      梨岡 寿男

 戦勝を説く支那兵の軍服に呉軍需部と書かれてありぬ      菅谷 瑞人

 古びたるペンを拾へるこの我に異國の看守新しきを呉れぬ      今藤 好雄

 素人芝居の年増女の友の顔おもはゆ気なり吾を見て笑める      寺田 清蔵

 くさぐさの文は焚きたり夜を一夜明けては立たむ大空の下に      大西 正重

 出でて行く友を送りて獄房のつめたき土間に一人佇つわれは      長谷川 稔

 ブロマンの見ゆるわたりは虹口(ホンキュー)か吾が住み馴れし懐かしき街      安野 秀岳

 囚われの身にしあれども吾が心ゆたかにあれと土耕しぬ      門屋 博

 捨てられし軍馬はかなし野に出でて日ねもす麦の穂を喰みてをり        同

 昨日(きぞ)降りし烈しき雨にクリークの岸の枯草水に隠れぬ      本田 同

 麦畑に残るトーチカ幾とせの雨にくづれて芝萌えにけり      安野 秀岳

 今朝ふれる雨の静けさよよるべなき軍馬青草を喰みつつ濡れをり      酒井 正司

 吾が戦友と野山駈けりし弾薬車銹つきてあり江湾の駅に      今藤 好雄

 襤褸をもて荷紐を今日は作りけり祖國に還る日の近づきて      田中 勘五郎

 戦犯てふ活字いち早く目に入りぬ菓子を包める支那新聞紙      富高 増木

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