@





       
ENGLISH
In preparation
運営団体
メロウ伝承館プロジェクトとは?
記録のメニュー
検索
その他のメニュー
ログイン

ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失

歌集巣鴨・12

投稿ツリー


このトピックの投稿一覧へ

編集者

通常 歌集巣鴨・12

msg#
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/7/24 7:36
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 面 会(その一)

 死水を採らすがわれの願ひぞとのたまふ父は網窓隔てて      井野 雅治

 みささぎのぼけの木のことを語る父老いましけりとまむかひて思ふ      鈴木 義輔

 お互いの苦しみは言わず網越しに笑みつつ別れし父と我かな      片山 謙五

 東京ゆ北に杳けき雪郷の幾年會はぬ母をし思ふ      最上 善一郎

 母そはに寄りゆく心はやりつつ面会申請書を書き改むる        同

 泣かしめてならじと希ひほがらかに四十五分の時間を努む        同

 眼尻の皺に滲める涙の痕見いだしてより言葉曇りぬ        同

 吾が面確かならずと言う母に幾度も位置を更へて見せたり         同

 をのこ故泣かじ笑まむと思ひつつ思ひつつ泣きぬ母にし會へば      餅田 実

 囚はれの身には許されねど老い母がはるばる餅をさげて来ましし      林 義則

 帰国後始めて面会す
 五年の窶れ見せじと微笑めば金網(あみ)に頬寄せ泣き給ふ母      渡辺 哲男

 刻(とき)過ぎて網戸をはなれふり向けばのびあがりのびあがり目守らす母上      中村 安蔵

 八十路の老母伊豫より来る
 網へだて慈眼しづかに笑みませば勿体なしや菩薩に在す      中原 獅郎

 はろばろと来て網の外に立つ母はお礼詣りを誓はせたまひぬ      渡辺 勝正

 頬痩せしと嘆かす母に袖めくり太腿見せむすべなかりけり      浅利 英二

 網窓に頬寄せて語るわが妻の息吹きに触れて切なかりけり      田代 友禧

 引つめの髪に梳れるわが妻の薬の息が匂ひこそすれ      東木 誠治

 厳めしき二重の網に頬よせて苦しき生活(たつき)語る妻かな      足立 福三郎

 我が憂ふ生活(たつき)のことを話せども多くは語らず網越の妻     石松 又助

 泣く妻のこころ知る故叱り得ず面あぐるを待ちがてに居り      寺田 清蔵

 苦しみの数々はいはずただ母が母がと云ひて泣ける妻はも      宮迫 忠久

 恙なく帰り来ませと網窓越しに吾をみつめし妻の瞳はや      長田 邦彦

 さりげなく語りあへどもたまゆらにいのち光れる汝が瞳(まみ)を見き      長谷川 義男

 「精神的に富んでるんですもの」とうるんだ眼で云う夫の私が囚人なのに      佐々木 勇

  条件検索へ