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歌集巣鴨・41

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編集者

通常 歌集巣鴨・41

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/8/23 17:59
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 
  冬

 長梗(ながくき)の石蕗(つは)の黄の花いたぶれる風は見えつつ玻璃窓(はりど)を閉ざす      平尾 健一
                                               (巣鴨七首)

 糸杉の支へ木二本影曳きて交る所に石蕗(つは)の黄の花      故井上 勝太郎

 向つ棟をやうやく越えし日の光石蕗の廣葉にきらひ初めけり      故田口 泰正

 巖(いつく)しき天のそぐへはやがて来む冬をひそめて澄みとほりたる      楢崎 正彦

 天づとふ陽は照らせれど露霜のまだひぬ杉葉ここだたまれる      故井上 乙彦

 時雨降る今朝は右足の戦傷を両手(もろて)の中に暖めてをり      故井上勝太郎

 眼は閉じて夜半をさめをり硝子窓(ど)を揺りて過ぎゆく冬の風の音      鍵山 鉄樹

 今は亡き友の放しし池の魚は氷の下に生きてありける      星野 多喜雄
                             (上海)

 指の先いたく冷えつつ書きゐしが窓白むまで雪積みにけり      故井上勝太郎
                            (巣鴨十三首)

 投光器の光に冴えて雪の上(へ)に丁字立標の斜に曳く影        同

 扉(と)の上に「女囚」の札あり雪の面に木の葉の影が動きてゐたり      故幕田 稔

 淡々と起き出でし時靄こむる庭に鋭く鳴くは何鳥        同

 暖房電動機(サーモタンク)の微動つたふる石廊にあかあかと長し没り日のひかり       故田口 泰正

 冬の日の照りやはらかき窓の外に午告ぐるラッパ鳴りわたりつつ        同

 吾がこもる畳に冬の陽光(ひかり)さししましば心和みてゐたり      瀬山 忠幸

 あかあかと圓かなる陽(ひ)は没らむとし逆光線に立つ雪の富士      田代 敏雄

 釈放のニュース吾らにかかはりなく氷雲(ひぐも)は低しクリスマスの朝      鍵山 鉄樹

 年暮るるしづかに寒き夜の牢に聖誕の歌かすかにきこゆ      友森 清晴

 釈放の人もあるらし年の瀬を窓のそとびは雪降りしきる      故榎本 宗應 

 ながらへて春を待つべき身ならねどなほ惜しまるる年の暮かな      故板垣 征四郎

 死に就きし友ら憶ひつつ逝く年の冷き水に髯そりにけり      冬至 堅太郎

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