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歌集巣鴨・4

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通常 歌集巣鴨・4

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/7/14 10:39
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

  冬

 わが心恃めなくなり出で来れば(くれば)寒空(さむぞら)遠き暁の明星      炭床 静男

 霜凍る朝をひもじく鉄柵に沿へば如何なる懺悔も空し      大槻 隆

 氷雨降る房にこもらひ「関東軍最后の日」なる小説をよむ      田中 徹

 寂しみとこの悲しみを誘ふごと時雨は間なく惑を湿す      吉田 喜一

 肩先に冷え及ぶなり手ぐさりの白くひかりてくびれ来るとき      岩沼 次男

 冬空にむかひて眸疲るれば愚かなるかも心和(な)ぎにけり      大神 善次郎

 初冬(しょとう)の陽だまりにゐて今更に空の蒼さをしみじみと見つ      浜田 貞

 囚人の笑ひうつろにひびきけり冬の眞晝の風なき庭に      原口 要

 動かざる大き雄鶏薄目あけて冬空巡る日を探ねたり      大石 鉄夫

 御佛(みほとけ)の眉の容(かたち)の三日月が病棟の上の晝空にあり      諌山 春樹

 花圃の雪解けの土を平(な)らしつつ大寒にむかふ芽をいたはりぬ      大神 善次郎

 音たてて枯葉を街に吹き放つ風あり遠く冨士見ゆる舗道(みち)      大槻 隆

 冬籠るものはひそみて刑場に蜘蛛の巣のみが光を乱す        同

 夕ざれば立体の影投げ合ひて地上のものら個々に貧しき      小林 逸路

 くだちゆく冬夜の房にめざめ居て孤高の二字を思ひつづくる      丸山 一字読取不能

 呟つぎて目覚めしがまた空洞のごとく底冷ゆる闇に眠れり      大槻 隆

 予報ありて面会なかりし日の夕ラヂオは北海道の初雪を報ず      福岡 千代吉

 南の島ゆ還りて初めての斑れ白雪我は踏みつつ      樋口 良雄

 舞ひ降り舞ひ昇りては積む雪をひとやの窓に飽かず眺むる      牧沢 義夫

 ちらちらと白雪の降る獄庭にするどきひわの声冴え渡る      星川 森次郎

 庭隅の冬陽とどかぬ凍土にはつかに残る昨(きぞ)の夜の雪      坂巻 信雄

 朝早く面会人の往き来する道の凍て雪除かんとする      田中 勘五郎

 残雪に照れる光はあたらしく疎懶(そらい)の意(こころ)いましめやまず      平尾 健一

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