画像サイズ: 613×242 (21kB) | 今夜の宿は峠の茶店
駅の近くには大きなホテルもいくつかあり、静かな落ち着いた街である。街の中をパッシリオ川というアディジエ河の支流がごうごうと音をたてて流れている。やがて道は登りになり片側はブドウ畑になっている。日差しは一段と強くなって汗ばむほどだ。やはりここは北ヨーロッパの人たちが憧れたアルプスの彼方、「レモンの花咲く国」に属するのであろう。
ブドウ畑に囲まれて白い壁の家がある。「ヤオゼ」という看板が出ている。ヤオゼというのは オストリアでよく使う言葉で「おやつ」のことをいうらしい。成る程、そういえば「峠の茶店」という感じの家だ。 ブドウ棚の下のテーブルで四、五人のグループがお茶の時間を楽しんでいた。団子や甘酒こそないが大きなケーキに挑戦しているようだ。ブドウ棚越しに緑深い町、そしてそのむこうにはチロルの山なみが見渡せる。こんなところに泊まれたらさぞ楽しいだろうなと思っていると、なんとレジの上に「ZIMMER」なる札がぶら下がっているではないか。喜び勇んで建物の中にはいっていった。 若い奥さんに案内された部屋は壁もシーツもまっ白、カーテンだけが真紅のビロード。窓の外には、さっきブドウ棚の下でみたのと同じ風景が広がっていた。宿貨はドビヤッコのおばあさんのところより300円程高い。バス、トイレはないが洗面台は何時でもお湯が使える。熱いお湯で身体をふいてさっぱりすると思う存分昼寝を楽しんだ。窓からは涼しく爽やかな風が入ってくる。 |