画像サイズ: 509×300 (26kB) | 「美しい自然と、暖かい心」
オーストリアの民族衣装を身につけた小柄な校長さんとは、フィラッハで別れた。 フィラッハから乗った支線で、おばあさんに行き先を聞かれる。「リーエンツまで」というと「シュピタールでの乗り換えは外国の方にはちょっと難しいかも知れません」という。そして隣の席の若い奥さんに「あなた、シュピタールで降りるっていっていたわね。この方を乗り換えホームまでご案内して」と言う(正確に言うと「言っているらしい」)。あかちゃんを抱いてスーツケースを引きずりながら、若奥さんは、わざわざ私の乗るホームまでついてきてくれる。「もういいです。ここからは分かりますから」と手真似で合図しても、だまってニコニコしながらついてきてくれた。
リーエンツでは街を流れるドラウ川に沿って散歩する。散歩道のそこここにマリア様などを祭った道祖神か、お地蔵さまのようなものがあり、野の花が手向けてあるのを見かける。信仰心の厚い土地柄なのであろう。
オーストリア北部のドナウ川沿いに「リンツ」という街がある。このリンツは大都会なのだか、東チロルの「リーエンツ」は、自然がいっぱいの小さな町です。 散歩道の後方から「チリン・チリン」と自転車のベル。振り向くと、70すぎじゃないかと思われるなおじいさんが近付いてくる。ニコニコしながらだまって手にしたキャンデーを三つ私に手渡す。自分も一つ口に入れる。そして、笑顔のまま「チリン・チリン」と通り過ぎていく。 リーエンツでは、今、春の花が真っ盛り。目の醒めるような黄色のエニシダ。甘い香りのアカシア。淡いピンクのライラック。 リーエンツは北海道に似たところ。有名な観光地ではないけれど、山並みと牧場と教会の塔がよくマッチするところです。
ウイーンの校長先生、喜んでください。あなたの国の「美しい自然と、暖かい心」はここ東チロルでは健在です。 |