句集巣鴨・2
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十年
ルソン島 タール湖畔(五句) 小林 逸路
湖澄んで椰子の實一つ漂へる
湖を来る帆足は速し爽かに
嶺づたふゲリラの径や花芒
茶毘の煙靡かず髙し三日月
秋風や岩攀ぢ登る野牛群
敗戦(二句) 白井 宏樹
吾がすべて南の落葉とともに焚き
スコールに叩かれ訣別す戦友(とも)の墓
戦犯容疑者として収容され(一句)
罰として裸囚立ち並ぶ炎日下
傷心を月のモルロの輪にまじる 田中 稲波
(註 モルロとはインドネシヤの踊り)
兵器海没皆むせび哭く椰子月夜
比島
絞首台友ひかれゆく朝寒し 渡辺 風士春
こほろぎの角吹く風や石疊 片山 和風
友の船見送りしあとゴム紅葉 原 紅泛子
昭和二十一年
護送船中の裁判対策(一句)
この嘘は美しきもの夜光蟲 田中 稲波
マニラ湾木曽の残骸(むくろ)に夕焼けて
(註 木曽とは巡洋艦)
死の翳を深めて蟲と哭く深夜
夏舞台あわれ狂女が紅の帯 小林 逸路
み佛の御手にこほろぎ夜もすがら
マニラ法廷(一句)
海近きLAWN(ローン)は圓し芝刈機
判決(一句)
弾痕にマニラの夕日赤かりし 吉永 跣子
独房に病みて春雨母恋し 渡辺 風士春
入獄の身につめたかり月の影 福岡 幽鳴子