句集巣鴨・22
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十五年・その一
内地帰還(三句)
寒濤に白雲に富士浮かびけり 原 紅泛子
懐しき山川冬を構えたる
身に痛き寒気と獄の友情と
巣鴨の日日(マヌス島へ行く人ありて)
行く人に還れる我に春浅し
絞首台の塀にもたれて日向ぼこ
初の面会
感涙を外套にふせ母に逢ふ
手枕に紙鯉仰ぎラジオ聴く
髯のびて心貧しや梅雨故に
かにかくに思い知らされ梅雨ごもり
父母にいつの望みか星祭り
GIの悲しきまでに水凍てる
水耕(三句)
七夕の竹おちこちに田のながめ
汗に倦く流れ作業のトマト選る
貨車蔭に離れ憩ふや雲雀の野
アメリカンラグビー見物(二句)
タッチダウンなりて外套にこごもりぬ
足先の冷たきハーフ・タイムの閑
颱風の近づく朝の廊を拭く
気笛灯にきびし颱風去りたるや
書くことの少なき便り師走入る
老いの身に幸あれ初日やはらかく
冱天に塔組む丸太突っ立てる 北 三十彦
強東風や狂暴に駆られたき意慾
アパートは古り春泥に子ら育つ
護国寺の甍の秀や青嵐
彌撒終えてサルビヤ炎ゆる園に出づ
芝刈るや五月晴なる庭廣く
蝕める枇杷の堅葉や暑さ日日
嫋々の尺八尚も晝寝ざめ
打水や蜘蛛下りくる花柘榴
ユッカの芽踏まれて土俵開かな
烈日や狂囚房の鉄格子
鶏頭や噴水跡のロータリー
高檜葉に糸瓜揺れをり鰯雲
月渡る小羊雲の高さかな
菊今宵月金星と相寄りぬ
木槲のひそと紅さす秋芽かな