句集巣鴨・33
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十五年・その十ニ
帰還路や南十字を夜もすがら 柴田 仙岳
新涼や病母に膳をすすめけり
射撃場のひっそり閑と柿たはは
初めて妻と面会して(一句)
振り返る廊下明るき五月晴 河野 曉雲
河骨を押し寄せて舟晝食(ひる)とする
不良児の収容トラック野分衝き
チタサネ号にて横浜に押送途中(三句)
チタサネ號シンガポールの初日の出 小柳 八絛
香港の夜景は涼し煙草うまし
P紋は古りたるがよし衣更へ
I氏出所(一句)
八疊に一人が欫けてゐる寒夜 塚田 静萃
焚火から離れて凍たる煉瓦敷く
減刑の噂まちまち焚火して 山本 豊泉
釈放さるる友と語りて明易し
霜解けを踏む足嘘言じみて居り 中庭 酔花
春泥やよちよちちいちゃな靴が来る
ささ蟹のものものしさよ岩清水 徳永 蕪亭
家土産(いえつど)に會心の句の二三あり
獄に覚め春暁夢を追ひかくる 伊藤 不宵
藤咲きて清しき心獄に生く
獄隅に小さく咲いてかきつばた 山本 如柳
新涼や茶屋の障子の白きこと
春潮や眠りこけたる船の上 吉田 瑞峯
涼風をさへぎりて立つ監守かな
僧の背に圑扇大きく動きけり 足立 岳春
朝顔の鉢おき替す暑さかな