句集巣鴨・12
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十四年・その一
詩にすがるたのしさのみに春を待つ 三上 木草子
憂きわれに花圃の愉しく朝曇
野鼠のわなに花散る園の萩
雑魚寝して思念それぞれ今日の月
雨はれて鶏頭淡き影うめり
詩にすがるたのしさ菊の咲きにけり
囚愁にたえゐる老いの木葉髪
断崖のしぶき虹うむ冬紅葉
傷心の瞳に曇天の花八ツ手
大寒のゆるむ日天に光なし
大寒のゆるみて更かす夜の讀書
雨雲のたれてきほへる奴凧
獄門の凍てを踏み風とだえたり
獄囚の縄なふ庭の桃の花
金髪の獄史門守る桃の花
菜園の隅に眞白き藤の花
測量機のぞけば柳芽ぶきけり 中村 桐青
寝ころべば草かぐはしく頬にふる
春灯の下合掌の影一つ
梅雨の雲わが焦燥の顔圧すか
差入れの書籍に匂ふ家の黴
緑蔭に閑かな時を得て独り
蜘蛛一つ壁の灯影をほしいまま
雲の峯崩れて青き窓まぶし
陽はいよよ死の秋蝉にいたく照る
讀経の唱和へ秋の空晴るる
母慕ふ窓冷んやりと日は暗し
ふるさとを恋へば秋天果しなし
かたくなに言言ひ庭の秋深し
感情の渦巻菊にしづもりぬ
顔白き死囚に今し菊さかん