句集巣鴨・28
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十五年・その七
若葉風常に見え居て常に遠し 樽本 事来
人に見せまじき便りを片蔭に
火焔樹の今朝は減りたる花数ふ
夕立晴れ獄舎俄かに乾きゆく
マンデーや脱ぎ捨てし衣の小さかり
牢暑し今日も裁きのこと綴る
今日秋や出船の音をのみ遠く
獄友の急死(一句)
検屍台冷たし君をおきまつる
獄窓の木の芽明りに立ち呆け 松山 翠巒
父の訃 (一句)
父の訃を悼まれ菊に歩み去る
短日の獄塀洗ひをる囚虜
亡き人の名を書き連ね寒灯下
母へ子へ手紙書き分け寒灯下
桐一葉何時まで待つ身待たるる身
過去言はず未来語らず春を待つ
難航す行手に遅き月を得し 高木 風花
獄の門開きをり春の街見ゆる
颱風の遠くそれたる花圃を掃く
白萩や療舎の上の晝の月
焚火囲む中に一人の口巧者
年末石井漠舞踊団来たりて(一句)
スフィンクス踊る妖気に月すみて