句集巣鴨・10
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十三年・その六
椰子猿を見上ぐる人の集ひかな 神住 童子
應接間客と守宮と裸女の額
熟るるまでパパイヤ育て来て離住
独房に月光じつとにらみ坐す
スコップにあごのせて見る秋の雨 中村 桐青
裁きへの囚列黙し霜の音
散歩する人に日はやし花八つ手
出獄の夢に覚めたる寒深夜
未帰還の僚機待つ空蛍とぶ 市橋 想子
眞對へる鉢の金魚はきつき顔
寝姿を畳に染めて房の汗
秋の風セロハンの窓揺りにけり
むらさきに輝く蜥蜴寺に入る 土井 一昌
朝霧の椰子さわやかに入港す
怪鳥の枝移りする良夜かな
寒紅に妻おとろへて傍聴席 伊勢 一風
法廷に我が子抱き得しぬくき手よ
死刑判決(一句)
春しまき呆然として鐵窓にあり
守宮鳴く獄壁に故友の悲憤の詩 鈴木 南潮
獄衣脱ぎ大鋸で氷挽く
虜囚船鐵鎖鳴らして汗拭ふ
荷は捨てん汗の手錠のきびしさに 小柳 八條
寝返れば汗の手錠の喰ひ入りて
汗を噛みタラップ踏めば連鎖鳴る