句集巣鴨・3
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十二年・その一
比島(六句)
椰子なぎさ高き蕃舎の灯れる 最上 鳴々子
山窟に糧なし芒揺れるのみ
穂芒の波迫りて来飢餓の眼に
カランバ日本人墓地
幾百基しろき墓標や蟲しぐれ
マニラ市
壊れ聳つ高楼つとに夕焼けぬ
夕焼雲蕃婦ら街の聖堂へ
香港(五句)
検証の現地晝顔咲き乱れ 小畑 黙庵
國境はあのあたりらし秋澄める
法廷行藪の桔梗をかぞへつつ
刑決り鈴蟲の音の佳き夜かな
執行ありし直後に
とろ温き風見よ紅毛のうす笑い
マニラ出港巣鴨へ(三句)
風信器祖國へ向ひ空は初夏 小林 逸路
航跡はどこまでつづく夏の海
舳を追ふいるかの群や洋に月
刑死者を納棺して (三句)
椰子の丘なほ温みある手にすがる 鈴木 南潮
抛る土カンナに触れつ墓穴(あな)を掘る
殉國の獄友(とも)鎭もりてカンナ燃ゆ
判決を受けて囚舎の月に佇つ 田中 稲波
スコールの闇へ思卿の眼光らす
生還 (巣鴨還送)
富士が見え岬が見えて海涼し