句集巣鴨・9
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十三年・5
傍聴の母は痩せたり夏衣 岩崎 苔郎
網越しに妻子の顔は日焼せし
望楼の人動くなし雲の峯
吾子癒ゆる報せうれしき今朝の菊
病む吾子の夢ばかりなる霜の夜半
糸柳もとより急ぐ道ならず 三井 晴可
スマトラの古き支那寺釋迦寝像
大いなる沈黙なりき白牡丹
失職の靴ぼてぼてと梅雨晴を
枇杷の雨湖の虹消えんとす
泰民踊(ラムトン)の楽遠からじ牛蛙 樋口 吐美
マンデーに出されて眩し獄の庭
日日同じ思ひに暮れて獄暑し
野菊活けて獄舎も秋といふべしや
雲ながれてながれて秋の日が暮るる
子雀の餌を受くさまに微笑みぬ 西山 清風
犬晝を眠りはじむや春深し
朝寒や柳の毛蟲ぽたり落つ
鶏頭の眞紅太陽に挑みけり
崩れては相寄り秋の雲疾し
初夏の街どよもして今労働歌 田中 雀村
梅雨空やぼそりと獄友獨り言
所在なくとる手鏡も梅雨のもの
南凕の地に吾れ敗れて夏の草
休務今日蒲團ゆたかに敷きて寝ん