句集巣鴨・13
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十四年・その二
賀詞交はす而も新たな蜚語を足し 小林 逸路
髪ぬれて耒し君故に春を言ふ
春愁を或る夜星座に投げつける
東風吹くや漠々の雲井照月に
黙然と附會ききたり別れ霜
逝く春を婦(つま)は手枷の夫(せ)に見(まみ)ゆ
童話めく少女の聲よ花柘榴
短か夜の稿白きままただ離愁
梧桐や塀越して耒る街の霧
蜚語ききて秋めく地衣の庭を来ぬ
颱風の街ただ天にひれ伏して
淡々(あはあは)と暮天に霙吸はれたる
罵りに堪え来て朔風(きた)に瞳(め)を吹かる
鍵音の鋭く獄の明け易き 田中 稲波
梅雨ぐもり「矛盾」の二字をなぐり書き
反目の黙しに梅雨の房昏れぬ
出獄の意識夕焼濃き窓に
萩に風ふれゐる鉄扉ただ白し
秋陽背に今行く人の亡母(はは)に似し
晩秋のひかり煉瓦を運ぶ手に
裸女の寫眞(え)が開かれしまま房寒し
青木氏処刑(一句)
佛像の光り獄廊朝寒く
アトリエの中もすなはち冬の獄