句集巣鴨・25
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十五年・その四
佛印サイゴン寄港(三句)
座礁船に夏の雲浮く河口かな 作田 草塵子
土民らの目はうつろなりみな跣足
雲の峯廻るが如く河曲がる
巣鴨到着身廻品発送(一句)
春泥の庭に落ちたる荷札かな
ものの芽のみな浅みどり生きて還り
食すことの苦もなく今日を暑しとす
総入歯して又夏に向ひけり
梅雨だより達者と生活(くらし)にはふれず
留守宅を偲ぶ(一句)
つつましく生きて小さき門火かな
水耕途上(一句)
山茶花や焼残りたる門構
枯菊に風あり囚衣乾きあり
獄の塀高くめぐれる雪霏々と
秋に入る闘病すでに五十日 本間 静水
一切の夢忘るべし病みて秋
秋苔のみどり泌む庭生命慾し
血を喀ける呻き秋夜のいよよ冱ゆ
深む秋幻想なべてふり捨てむ
狂人の叫び秋夜の闇ゆする
今朝よりの黒服看守よくうつる
汽車の笛寒し野分の街昏れて
顔(かんばせ)の青き疲れや秋灯
老ゆる秋望郷の胸かきむしる
百舌の聲するどし肺にひびくほど
冬晴れのビル街明暗を整ふる