句集巣鴨・38
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十六年・その四
夏雲は無限に湧きぬ塀ありぬ 高野 朔二郎
皆日焼パイプと箸に性あらはれ
幼蟲のバッタ緑のまま死せる
菩提樹の青葉女囚はうら若く
女囚去り見馴れし夏の花圃残る
狂囚として帰るあり夏の海
時雨強くなりきし時に灯を消さる
異國の子手を振り別る合歓の街
夏海のはてに故國の現れなんや
春水へ石を投げては相語る 山口 光風
美少女の琴の音ゆかし花御堂
待つたより遂に来たらず春の行く
蓮の浮葉緋鯉の泳ぎ見てあかず
寝はぐれしわれによる蚊や雑居房
夏草や壕舎に今も戦災者
雪降ればうれしき心未だありぬ
日々うとき思念を凍に歩を運ぶ
夕風に野火めらめらと生き返る 市川 橘里
ささやかに師たりし母の針祭る
とどめなき卿愁今日も鰯雲
PTAニユース送られて(二句)
夏獄窓の瞳ランドセルの後を後を
親らしう生きたく耐へん炎熱下
後絶えぬ蚊に術もなく身を晒す
朝顔に施肥内還を知りてより
蜂の穴幾夜夢みし故國たり