句集巣鴨・17
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十四年・その六
死刑房にて(一句)
火蛾舞ふやわが魂ここに追ひつめられ 白井 宏樹
帰還船上(一句)
昭南と呼ばれし港星月夜
堪えて来し喜び雪の富士指しぬ
祖国上陸(二句)
歓迎を泣く瞳に祖國霞みたり
十一年振り祖國の雪
降る雪は爪哇を遠くはなれけり
春潮のひたと離宮の沈舟 岩崎 苔郎
逝く人のありて囚舎の朧月
亡き父の咳に似たるに振り向きぬ
廃苑の大樹に猛し百舌鳥の聲
年玉は友が手製の牢日記 保田 志空子
牢三年われまだ若し初鏡
蝿打ってつのる怒をまぎらしぬ
秋雨の庭に大きな足の跡
わが想ひ亡き人にありちちろ鳴く 市橋 想子
囚列は皆黙然としてしぐれ
逆巻きて興安吹雪視界断つ
凍てる夜を背に感じつつ待つ點呼
於 サバン島 (二句)
トーチカをおほふパパイヤ熟れしまま 木原 清人
メラピーの地鳴りにゆるる花火焔
(註 メラピーとは火山)
於 スマトラ島(二句)
水牛の宴掠奪結婚なりと言ふ
蟲放つ庭木の枝を選びけり