句集巣鴨・15
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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昭和二十四年・その四
風鈴の白き短冊舞ひそめぬ 東木 尾山
獄壁に今日蟻一匹の友があり
鶏鳴きて鳳仙花ほろとこぼれけり
行く秋を寂しむ友の手の温さ
街の灯を冬木すかして眺めけり
とがり芽の凍に堪えてある生命
鉄柵の凍れるままに日の昏るる
榾の火に翳す手首に獄の痩
獄庭に肥るパパイヤ雨季最中 小柳 八條
チピナン獄よりオンロス島(六句)
鉄門を出づればネムの並木風
手を振る子バナナ頭にのせたまま
マンデーの流れに女群手を振れる
草刈器音はずませて方向(むき)かへて
美女跣足サロン短かにかけよれる
囀りの止みてトッケイ鳴く獄舎
チタサネ號にて横浜に向ふ(一句)
雲の峯チタサネ號は進路北
春雨や帰房の襟にあるしめり 高橋 丹
春雨に濡れ来し囚徒火を恋ふる
刑場の壁しらじらし秋の風
試歩の目のまづ注がるる葉鶏頭
碁に更けてぼそりとあすの霜を言う
生活苦告ぐるたよりや霜固く
北風におのづと塀に添ひ行けり
小春日や絆たちたる塀なれど