句集巣鴨・51
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編集者
居住地: メロウ倶楽部
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遺作・その五
故青木?一郎
湯豆腐は美しうまし楽しかり
雪掻きや山三つ出来てお茶となり
その癖の指鳴らし兄爐に座る
炭出しや霜の山坂踏み馴れて
紅ジヤケツ着る幼子犬張子と日向ぼこ
復興の歩み綴らん日記買ふ
子の背に帰へる辨慶の大凧が
羽根上げて彼の女の瞳更に美くし
独楽笑ひ崩れる様に止りけり
独樂操る子構へつ眉宇の輝ける
羽子追ふ子赤い手袋赤りぼん
お隣家は寒鮒賣る*貼れり *マス 正方形に対角線1本の枡形
面脱れば湯気の微笑や寒稽古
節分やにらむ達磨に豆降りぬ
豆まきやありたけの声噛つく目
福は内眞似るや吾子のちゃんちゃんこ
目と口と手をつけて見るつくしん坊
ごまよごしおひたし汁の実芥づくし
猫ぐつくい大きく伸びて下もえる
獄窓に唯白雲や年ぞ逝く
高塀に雲湧く獄の年は暮る
日々の身に重刑の年ぞ逝く
クリスマス獄裡嘗胆三週年
独房や運命の鞭の年ぞ明く
元日や獄裡の壁に忍と彫り
初日の出獄の日壁光りそむ
パパイヤの太りて新春の白雲一片
母と會はんせめて初夢に獄裡吾れ
屠蘇なくも茶立ち目出度し獄の午
獄の新春死囚残命を尚淡々
鉄窓に見よ初御空の蒼さかな
獄衣洗ひ済ましてふと見る凧一つ
腕振る頭振る春風に死囚(とも)旺ん
飼はるとも斗魚は断呼斗魚なり
絶句
捕はれて突かるも斗魚は斗魚なり
明日共に散る戦友の寝息や春の雨