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捕虜と通訳 (小林 一雄) (14)

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通常 捕虜と通訳 (小林 一雄) (14)

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/11/21 9:14
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 第四章

 私を支えた〝収容所語学校″その1


 この捕虜収容所に勤務することになった原因の一つは、せっかくマスターしかけた英語を実際に使って英語国民のナマの文化の一端に触れることができれば、ということだった。だから、慣れるにつれて、その欲望は強まり、生来のオッチョコチョイ性も手伝って、暇さえあれば、所内をうろつき、捕虜たちと話し、ナマの発音を吸収しょうとつとめた。
 私のこうした欲望が彼らに伝わったのか、勤務二か月ともなるころから、私の姿を見ると「日本語を教えて下さい」という。ただ「代りに日常英語のうちコバヤシさんが知らないことを話してあげよう。しかし私らは捕虜としての立場にあるので、日常会話を単に話すだけです。この私たちのいう意味を素直に受けてください」彼らは一見、大ざっぱで、明るく振舞っているように見えても、常に自分の立場を冷静にみつめ、われわれ日本人に対応していた。
 所内をうろつき、捕虜と会話をすることが職務の一つとして日課のようになっていったが、これが私にとっては日常英会話とアメリカの庶民文化を教えてもらう、またとない機会となっていった。捕虜たちも日本語を私から習い、日本の庶民の風習・文化の一端を知るきっかけとなったことは事実だ。私はこうした所内での彼我《ひが=相手と自分》の関係を「収容所学校」と勝手に名づけ、職務を兼ねて積極的に彼らに接していった。
 ある日、私は町の本屋で一冊の日英語読本を買った。外国人向けに英訳譜を入れた日本語と英語の日常会話読本で、彼らに対する私のテキストに使った。もちろん、この本は彼らにプレゼントし、暇なときに教える時間には彼らがこれをもとに、私にいろいろと質問し、正しい日本語を覚えていった。

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