捕虜と通訳 (小林 一雄) (15)
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私を支えた〝収容所語学校″その2
〝収容所学校″は特定の時間と場所で開かれたのではない。ちょっとでも暇があれば、立ち話のかっこうでも行った。生活棟でも、病棟でも、厨房《ちゅうぼう》棟でも、天気のよい日はグラウンドに座って、ある時は将校と、、ある時は下士官や兵士らと…という風に、一対一あるいは一対複数で行った。相手によって会話のキッカケや仕方はマチマチだった。炊事班のメンバーと話すときには「これはどうやって味つけしたのか?」「日本人の舌には少し甘過ぎる」と言った風に。
病棟では「傷の痛みぐあいはどうか?」「この傷はいつ、どうしてできたのか?」「病気の時には静かに横たわっているのが一番。早くよくなってみんなといっしょに暮らせるようにならなければダメだよ」 ケース・バイ・ケースの切り口でしゃべり、相手の発音を覚えていった。
「サノバピッチ」-ある時、一兵士と話していると、彼はとつぜん、こう発音し、ぐっとにらみ返したように、私には思えた。「何? サノバピッチとは何という意味?」「おっと失礼、あれは悪いスラングで、正しい英語ではない。たまたま、昨日、所外の作業中に日本人の監督から理由もないのに怒鳴られたのを思い出し、余りにも腹が立ったので、つい口に出した。すみません」「一体、何という意味か、教えてほしい。私にはチンプン、カンプン、意味がわからない」「つまり、こんちくしょうという意味。サン・オブ・ア・ピッチ=SON (息子)・OF・A・BITCH(雌犬)=」「ああ、そういうことなのか」〝サノバピッチ″と彼らは発音するが、二人とも顔を見合わせて大笑い。私は初めて知った悪いことばの、この英語を繰り返したが、このことばの真の意味は辞書を引いても出ていない。相手を見下げ、罵倒《ばとう=激しくののしる》する卑猥《ひわい=下品でけがらわしい》なことばである。日常英会話は、直接、彼らと接してみないと、容易に身につかないと、しみじみ考えさせられたものだ。
〝収容所学校″は特定の時間と場所で開かれたのではない。ちょっとでも暇があれば、立ち話のかっこうでも行った。生活棟でも、病棟でも、厨房《ちゅうぼう》棟でも、天気のよい日はグラウンドに座って、ある時は将校と、、ある時は下士官や兵士らと…という風に、一対一あるいは一対複数で行った。相手によって会話のキッカケや仕方はマチマチだった。炊事班のメンバーと話すときには「これはどうやって味つけしたのか?」「日本人の舌には少し甘過ぎる」と言った風に。
病棟では「傷の痛みぐあいはどうか?」「この傷はいつ、どうしてできたのか?」「病気の時には静かに横たわっているのが一番。早くよくなってみんなといっしょに暮らせるようにならなければダメだよ」 ケース・バイ・ケースの切り口でしゃべり、相手の発音を覚えていった。
「サノバピッチ」-ある時、一兵士と話していると、彼はとつぜん、こう発音し、ぐっとにらみ返したように、私には思えた。「何? サノバピッチとは何という意味?」「おっと失礼、あれは悪いスラングで、正しい英語ではない。たまたま、昨日、所外の作業中に日本人の監督から理由もないのに怒鳴られたのを思い出し、余りにも腹が立ったので、つい口に出した。すみません」「一体、何という意味か、教えてほしい。私にはチンプン、カンプン、意味がわからない」「つまり、こんちくしょうという意味。サン・オブ・ア・ピッチ=SON (息子)・OF・A・BITCH(雌犬)=」「ああ、そういうことなのか」〝サノバピッチ″と彼らは発音するが、二人とも顔を見合わせて大笑い。私は初めて知った悪いことばの、この英語を繰り返したが、このことばの真の意味は辞書を引いても出ていない。相手を見下げ、罵倒《ばとう=激しくののしる》する卑猥《ひわい=下品でけがらわしい》なことばである。日常英会話は、直接、彼らと接してみないと、容易に身につかないと、しみじみ考えさせられたものだ。