捕虜と通訳 (小林 一雄) (22)
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編集者
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第六章
クリスマスに一挙に噴き出したアメリカ人気質・その1
収容所は、隔離ゾーンだからそこに住む人間はとかく精神的に湿っぽい暮らしを余儀なくされる。彼らは強者の側からつねに監視され、保護されている。だから彼らの持って生まれた〝民族性″〝人間性″も、個人差があるとはいえ、抑圧され、なかなか表面に出てこないのは致し方のないことなのだ。
しかし、なにかのきっかけ、チャンスがあると、それはまるで噴き出るように表面化する。いままで、あるいは普段、抑えられているだけに噴出度は、まるで活火山の爆発のようにすさまじい。
それまで私は〝アメリカ人気質″ということを考えたことがなかった。学生時代、アンクル・トムに代表される〝イギリス人気質″については、おぼろげながら〝紳士″ということばで一般論としては想像できた。欧州各国の人びとの気質も、アメリカ人の気質も共通性のある民族として理解していた。考えてみれば、これほど薄っぺらな〝モノの見方、理解の仕方″はない。
なのに、どうしてもそれ以上の理解はむづかしかった。だからアメリカ人の持つ共通の民族性、気質といっても、興味も関心も湧《わ》かなかったのは当然だろう。
それが、この捕虜収容所に勤務した結果、かつて無関心だった、当然これから十分に理解の必要を求められる〝アメリカ人″独特の〝気質″を否応なく知らされるハメとなり、いまでは、よかったと思っている。
昭和十九年(一九四四)も終わりを告げようとする十二月の半ばごろだったと記憶する。捕虜たちが「クリスマスに思いきり笑い、リラックス・ムードの一日を送りたいのでわれわれの提案を許可してほしい」と申し出てきた。
クリスマスの手づくりシアターを開設、喜びをともにしたいという希望である。倉西分所長は、一つ返事で許可した。「西欧文明の中核を形成するキリスト教の生みの親キリストの降誕を祝福する日の催しは、関係する民族にとっては、かけがえのないイベントである。その昔、ローマ人が冬至に行った農神祭をキリスト教徒が受け継いで宗教的な儀式に盛り上げたのがクリスマス・セレモニーともいわれている。何はともあれ、彼らにとってはキリスト降誕を祝う伝統的なクリスマスが民族文化の大きなウエイトを占めている。虜囚となっている彼らの唯一の最大の文化は、それなりに尊重するのが、たとえ戦乱の中とはいえ、彼らを保護する立場にある日本人の武士道であり、大和民族の心の表れだ」-倉西分所長の崇高ともいえる説を初めて聞き、感動したことを覚えている。