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捕虜と通訳 (小林 一雄) (25)

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通常 捕虜と通訳 (小林 一雄) (25)

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/12/11 9:15
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 クリスマスに一挙に噴き出したアメリカ人気質・その4

 戦場に虜囚となり、故国に残した愛妻や彼女たちのことを気にする風刺劇を通じて〝みじめさ″を吹っ飛ばそうとする努力。面、底知れぬ陽気な仕ぐさと演出でみんなと笑い、叫び、思いきり、イベントを楽しもうとする。この 〝アメリカ人気質″を初めて目の前に見て、アメリカ人の底の深さと、表現の面白さ、明るい心根につくづく感心させられた。このことは戦後、ずっと〝友人″として付き合うようになってから、彼らの一挙手一投足が証明する 〝民族性″であることの理解をいっそう深めていった。ユーモアに富むアメリカ人の特性がよく表れていた。
 民族性といえば、笑い、泣き、哀しみ、嘆く風情は、万国共通だ。ただ、大自然のかもし出す環境、科学技術の進展を受容する尺度などによって、その集団の生きざま、モノの見方、そして考え方、行動は微妙に違ってくる。歴史の歩みがやがてそれを固定化させ、さらに同化させたり、風化させたりしながら、独特の〝調べ″となって伝統を形づくる。人間というまぎれもない同一の土壌に立って、その原点をふり返ると、どの民族も等しい希望と貪欲《どんよく》の間に苦しみ、笑い、生へのあくなきチャレンジ精神をかき立てている。
 〝陽気なアメリカ人気質〟を収容所に見て、私の人類観、人間観は、チョッピリ、成長したのだろうか。それにしても「人情に国境はない」(Humanity is one)とつくづく思わせた。逆境の中で明日の命を憂いながら暮らす捕虜たちの、せめてもの喜び。そのひとときにユーモアを忘れない彼らの強さもそこにあるのだろう。鬼畜米英を叫ぶ当時の日本人とは大きくかけ離れた彼らの姿を見た思いで、一方では奇妙に感じられたものだ。

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