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捕虜と通訳 (小林 一雄) (38)

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通常 捕虜と通訳 (小林 一雄) (38)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2008/1/13 8:16
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 巌しい監視下で続けた交流 - 日本軍人の思い出・その2

 点呼の時など、彼らは日本の軍隊式に日本語で「総員△△人、事故△人、異常なし」と上手に発音して報告したのには驚かされた。彼らなりに日本語の習得に努力していることに感心したそうだ。私(小林)があとから勤務し「ずっと以前からこの調子だよ」と峰本さんから知らされ、この目で現実に日本語を使った点呼風景を見た時、本当に感心した。「通訳もいりませんね」と冗談をいいあったものだ。捕虜のある将校は「所内で平穏に暮らすためには日本語を話し、理解することが先決で、いつもすぐ通訳を呼ぶわけにいかず、日本の軍人や軍属から教えてもらいながら、みんなが努力している」と強調していた。〝郷に入らば…"の暮らしへの対応ぶりが印象に残っているという。
 「彼らの日本語勉強熱はすごかった」というように、所内巡視中でも呼びとめて筆記用具を出し、よく質問した。私に対してもそうだったが、峰本さんが驚いたのは「日本語には同じ発音で意味が違う語がある。その違いを教えてくれ」と「橋と端」「父と乳」などの違いを質問してきたこと。すぐ返答できず、辞書で調べ「ブリッジ(BRIDGE)、チョップスティックス(CHOPS↑ICKS)、エッジ(EDGE)」「ファーザー(FATHER)、ミルク(MILK)」などと教えたという。彼らもその英語発音を正しく直してくれて、お互いにこうした片言のことばに、手まね、表情をプラスして理解し合ってきた。
 愉快だったのは、彼らが口ぐせのように、「ビヨウキ(病気)」ということだった。しかも彼らのいう〝病気″は、体調の悪いことも指すが、服などが破れたり、物が壊れた時、下手なことでも〝ビョウキ″ということ。「上着が病気・‥」慣れるまで急にこういわれて大笑いしない日本人はいないだろうが、彼らは真剣だった。逆に、よいことは何でも「ジョウトウ(上等)」といっていた。「あなたの奥さん、上等でしょう」 (美しいという意味) 「あなたの英語文字上等。発音、病気」何ともユーモラスな表現に、彼らとの親しみは深まっていったという。
 

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