@





       
ENGLISH
In preparation
運営団体
メロウ伝承館プロジェクトとは?
記録のメニュー
検索
その他のメニュー
ログイン

ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失

捕虜と通訳 (小林 一雄) (49)

投稿ツリー


このトピックの投稿一覧へ

編集者

通常 捕虜と通訳 (小林 一雄) (49)

msg#
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2008/3/18 8:44
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 第三章 贈られた友情の「身分保証文」・その1

 約一年半にわたる捕虜たちとの生活は、私のかけがえのない人生航路の岐路に、大きな一石を投じることになった。それも明るい未来を示唆する〝開運の一石〟となったのだから、いま考えるとあの時代の彼らとの〝交流″は幸運の女神に導かれたものだったと確信している。
 一民間人として働いた私に彼らは、日本降伏後の占領軍の統治下でのいばらの道を予測していわば「身分保証書」ともいうべき、親愛あふれる〝親書〟をしたためてプレゼントしてくれたのである。この親書がのちにいかに重要な役割を果たし、私の身分を保証してくれたかについては、別の項目で披露しよう。
 日本が無条件降伏した終戦の日から五日目、八月二十日の午後だった。捕虜収容所生野分所の事務室に私は一人でいた。解放された捕虜たちの最高責任者となったアメリカ陸軍のフリニオ中佐(FLANKLIN・M・FLINIAU)が突然、私のデスクへやってきて一通の手紙を置き「きっと何かの時に役立つと思う。占領軍との関連で必要なときにこの手紙を利用してくれ」と固い握手をした。とっさのことで私には何のことか十分、理解できぬまま、この手紙を読んだが、彼の友情に感激した。
 「関係各位殿、大阪捕虜収容所生野分所の通訳、小林一雄氏を紹介します。小林氏は収容所の通訳として捕虜全員に実に献身的に協力してくれました。彼なくしては多くのことを確実に円満に遂行することはできなかったと信じています。ひとえに小林氏のおかげだったことを強調いたします。
 例えば、その一例として小林氏は、私たちが捕虜生活時代にもっとも必要としていた医薬品などを、彼自身のお金で買い求めプレゼントしてくれました。また、その日その日の必要なニュースも聞かせてくれ、私たちの士気を高める重要な力となりました。
 そのうえ、小林氏は通訳としての英語知識はもちろん、われわれアメリカ人の取り扱いについても信用のおけるものでした。小林氏にいろいろな厚遇を与えて下さるなら、彼と知りあったすべての浦虜の喜びはこれにまさるものではありません。
 一九四五年八月二十日」という文面だった。

 捕虜の中でもとくに親しかった最高責任者の彼から、しかも勝者の立場に変わった彼からそのとたんにこんな信望と親愛の情をこめた手紙をプレゼントされるとは、夢にも思わなかった嬉しいと同時に感激した。「ありがとう」思わず出たこのことば。私は彼と固く手を握り合って「意識してあなたのいうような行為をしたわけではなかったのに…これを友情だとつくづく思います。本当に感謝します。いつまでも宝として所持し、あなたの真実の心を私の心の中に暖めて生きつづけます」とお礼のことばを述べた。

------------------------------------------------------------

Ikuno,Japan August20,1945

TO WHOM IT MAY CONCERN:
This is to introduce Mr.Kobayashi,Our Interpreter of the Ikuno Prisoner of War Camp.
Mr. Kobayashi cooperated with all prisoners of war,and it was through his cooperation that we were able to accomplish many things which would have been impossible without him.
Mr. Kobayashi purchased with his own money medicines, in which we were in dire need of. He also kept us abreast of the news day by day thus keeping the morale of the men high.
Mr. Kobayashi’s knowledge of English and the ways of the American people is a credit to him as an interpreter.
Any courtesies that may be extended to Mr. Kobayashi will be greatly appreciated by all prisoners who have come in contact with him.

F.M.FLINIAU
Lt.Col.,Cavalry
0-30263

------------------------------------------------------------

  条件検索へ