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疎開児童から21世紀への伝言 2

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通常 疎開児童から21世紀への伝言 2

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/4/21 7:28
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 幸せとは

  -戦争を知らない人たちへ-

   藤原里子(栗田谷校)


  空を見上げる。
  澄みわたった青空に白い飛行機雲ひと筋。
  空から鉄の筒は落ちてこない。火焔は吹き上がらない。それがどんなに幸せなことか。
  六十四年前、日本国民は戦禍の真っただ中にいた。国土は焼かれ、
  多くの命が失われた。筆舌に尽くし難い凄まじい惨状にさらされた。

  一九三七年生まれ、終戦時、国民学校(小学校) 三年生の私の戦時体験も過酷なものだった。学童とは名ばかりで勉強どころではなく、いつも身近に 「死」があった。「死」が身近にあるということは、家族や友だち、自分自身の命の、ほんの僅か先の予測さえ全くつかないということである。

 いつの時代でも、その時代なりの不平、不満はあるであろう。
 しかし、少し視点を変え、想いを変えれば、戦争のない時世に生きられる幸せに気づくだろう。
 いったん戦争が起きれば、かけがえのない命が失われる。命の大切さ、平和のありがたさを、絶えず心に留めておいてほしい。
 自分がされて嫌なこと、決してしなければいい。

  ----------------------------------------------------------


 傷だらけの写真

  幾筋もの皺の入った写真
  父の招集 入隊
  わたしの学童疎開
  今生の別れを覚悟しての家族写真
  軍服姿の父 着物にモンペの母
  セーラー服にモンペのわたし 母の膝に幼い弟
  家族 四人
  横浜 山北 広島 三方に別れた
  敗戦 多くのものを失った
  わたしの手元に 疎開荷物の行李ひとつ 布団一組
  家族の証 母の持たせてくれた写真一葉
  この中にだけ 幼い日のわたしがいる

  霧散消滅するかもしれなかった家族
  辛うじて 生き延びた わたしたち
  安否わからぬ 友 想い
  悲しい記憶 甦る 八月


 失いたくないのは

  空から鉄の筒が降ってくる
  一つでも怖いのに 数知れず
  いちどに無くなる 何もかも
  親も きょうだいも 友だちも
  家も 食糧も 自分さえも
  平和で のどかな 飛行機雲
  けれど 今でも怖い 空の音
  首をすくめて 見上げる空
  落ちてきそうな 焼夷弾
  破滅の雨は もう降らせないで

  陽の光 静かな雨だけ降るといい
  やさしい まなざし 注ぐといい
  きっと気づいているはず あなたなら
  失いたくないのは 何なのか
  大切なものは 何なのか


 空

  逃げ惑う人々の頭上に
  火を噴く鉄の筒 空から無数に落下する
  そんな時代が かって あった


 敗戦の夏

  日陰ひとつない焼け野原に涙した少女には
  二十一世紀の日本の空は恵みのベール
  紺碧の空 白線描く飛行機雲
  桜 銀杏 けやき並木に降り注ぐ陽光と雨
  ときに柔らかく ときには激しく

  今はない 空を覆う爆撃機
  人間を 家を 街を 山野を
  焼き尽くす鉄の筒は もう降らない

  あの時の少女に
  これ以上の何の望みがあろう
  日本の空に 世界の空に


 戦争を知らない人たちへ

  戦禍を受けた 少年少女
  いつまでも消えない 心の傷
  陽気に遊ぶ時でさえ
  心の底から 笑えない
  どこかに 不安を抱えてる
  助けも出来ず 助けも受けず
  みんな生きるに 精いっぱい
  戦中戦後の 苦しい日々は
  二度とイヤだと 言ってみても
  体験のない人には わからない

  けれど お願い これだけは
  戦争だけは 起こさないで
  命落とすのも 孤児となるのも
  今度は あなたたち あなたの子どもたち
  戦争だけは 起こさないで!


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