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疎開児童から21世紀への伝言 5

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編集者

通常 疎開児童から21世紀への伝言 5

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/5/23 7:24
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

仮想ブログ「太郎伝説」・その1

 清野登代松(西潮田校)


太郎ブログ開設のご挨拶

 このたび「太郎伝説」という名のブログを開設しました
 管理人は僕即ちブログネーム太郎です
 国民学校四年生 学童疎開中の報告が主なテーマです
 現在の日付は昭和十九年(一九四五年)八月上旬です
 六十五年後の僕即ちブログネーム一郎さんの書き込みをお待ちします


一郎から太郎へ 「ブログ開設おめでとう」

 お前の時代はブログなんてサービスはなかったからね
 存在しないシステムでは検閲なんて出来ないから何を書いても大丈夫だよ


太郎から一郎へ 「いざ入村」

 今日 疎開地に到着しました
 御殿場線の松田駅から徒歩で足柄上郡清水村の清水国民学校に着きました
 校庭では村人が ふかしたサツマイモをふるまってくれました
 僕たちの疎開方式は全国でも非常に珍しい各戸分宿方式といい
 あえて敵性言語で表せば「ホームステイ」方式です
 校庭で僕の受け入れ家庭は用沢という部落にある農家に決まりました
 ここに宿泊して徒歩二十分ほど離れた学校に通学します
 清水村には部落が十三箇所ほどありますが各部落とも個数十戸程度の小さな部落です
 用沢は比較的学校から近い方で遠い部落は四㌔程度の道のりを通学します
 鶴見では隣接学校との距離は一キロあるかないかですから五百㍍も歩けば学校に行けます
 それ以上歩いたら隣の学区です 通学は土地の子供と一緒です
 宿泊先は茅葺屋根の農家でした 建具は雨戸と障子と板ですから閉めると暗いです
 入口を入ると土間 ここに竃と石臼があり火を使うと煙がこもります
 この煙は江戸時代の時代劇に出てくる無双窓を開いて 逃がします
 無双窓とは「水戸黄門」のかげろうお銀が入浴したとき 覗かれた窓のことです
 理論的には全開しても五十パーセントしか開きません
 ガラスを使った建具は皆無です
 この家に初めて着いたとき家人が出迎えてくれました
 家族構成はお婆さんとその娘であるおかみさん
 高二の長男 小六の長女 小三の次男 小二の三女 五歳の四女 三歳の五女
 お婆さんの連れ合いのお爺さん 合計十人の大家族です
 僕を迎えた家人の目には歓迎の色は読み取れませんでした
 中でも小三の次男はクセモノで ことあるごとに僕をいじめました
 年下でも僕より体格が大きく敵いません
 僕がおかみさんと一言口利いただけでクセモノの表情はみるみる険しくなります
 僕はおかみさんを独占しようなんて毛頭考えていないのですが
 勢い僕は無口になります その後が大変です 次男の報復が始まります
 食事中 隣に座って僕の体を折るのです
 この家のご主人は兵役についていて家には居ません
 東京の麻布ナントカ連隊に駐屯しています
 家族はときどき面会に行きます
 そのときは お饅頭など作って持って行くのです
 僕はご主人になんの興味もありませんが
 このお饅頭だけは楽しみでした

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