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疎開児童から21世紀への伝言 7

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通常 疎開児童から21世紀への伝言 7

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/5/27 8:23
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

仮想ブログ「太郎伝説」・その3

 清野登代松(西潮田校)


太郎から一郎へ 「甘いものの不足」

 疎開する前にお菓子屋がみんな店を閉めたので 町はさびしい限り
 甘いものといえば乾燥バナナくらいのもの
 南方でバナナの皮をむいて乾燥した食べ物です
 色は真っ黒で衛生状態の悪いところで干したのでしょう
 中からウジが出たりしていました


一郎から太郎へ 「茅葺屋根の葺き替え」

 秋も深まったころ部落のとある農家で屋根の葺き替え工事をしました
 部落全員が集まって作業します 見知らぬおじさんが何人もきました
 茅は川向こうの山から川越しに張った鉄線で滑らして下ろします
 子供たちは茅の束を工事中の家まで運びます
 茅は乾燥していて軽いのですが 葉の縁はカミソリみたいに切れるのです
 子供たちは手に切り傷を負って血だらけになって手伝います
 軍手なんて気の利いたものはありません


太郎から一郎へ 「お手伝いの駄賃」
 
 工事手伝いの謝礼の意味もあったのか その家に夕飯を呼ばれました
 久しぶりの白いご飯にキンビラゴボウと味噌汁
 この食事すごく美味しかったです
 僕の最後の晩餐のメニューはこれで決まりです


一郎から太郎へ 「もういくつ寝るとお正月」

 もうすぐ正月だ お前には五円預けた貯金通帳を持たせてある
 半分くらい下ろして正月の小遣いにしろ
 受け入れ先からは小遣いはもらえない
 多分 町場にでかけることもあるだろう 無一文では寂しいからね


太郎から一郎へ 「独楽とドンド焼き」

 正月に家人たちは山北へ遊びに出かけ 玩具の独楽を買ってきました
 この独楽は直径十㌢ほどの木製のもので紐でまわして喧嘩します
 ぶつけられて割れたら負けです
 鶴見で遊んだベイゴマほど精緻な独楽ではありません
 またベイゴマほど回転の息が長くはありません
 なにしろ地べたでまわすので摩擦が大きいのです
 この地方では凧を揚げる風習はありません
 正月の男の子の遊びといえばこの独楽だけです
 楽しみといえばドンド焼きがあります
 これは生竹を直径一㍍ほどの束にして立てて
 中に枯れた木をつめて燃やすのです
 途中まで燃えると竹の束は倒れます
 枯れ木の燃えたオキで持ってきたお米の粉の団子を
 木の枝に刺して火にかざして焼きます
 数個のお団子は一つだけ子供が食べて残りは家に持ち帰ります
 家人はこの残りを食べて一年の無病息災を願うのです
 そんなしきたりを知らない僕は全部食べてしまいました
 家に帰ったらコッテリとイヤミを言われました
 そんなことなら初めから教えてくれればよかったのに
 疎開児はドンド焼きの経験なんてないんだから仕方ないよ


一郎から太郎へ 「ドンド焼きのお団子」

 それは災難だったね
 戦争中は何でも依らしむべしシラシムベカラズだからね
 済んだことは仕方ないから来年もう一度機会があったら
 気をつければいいさ

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